これまでの作/My past haikus


2002-2008


朝の陽に色さえわたる紅葉かな


たそがれて夕日を被る菊一輪


図書室の窓辺をたたく初時雨


山の辺に色にじみをり冬紅葉


冬の雨地蔵濡るるも傘もなし


枯園に冬の芽かたき桜かな


夕暮れや黒き湖面に木の葉落つ


小春風運びし木の葉空に舞ひ


図書室に日溜り降りて冬日和


短日や日暮るるせつな哀しかり


薄れ日の空山さびし冬の鳥


紅葉尽く枯野に高く烏かな


一片の氷に触れぬカフェの午後


一陣の風や冬の使者ならん


冬の夜や目は歳時記に星も見ず


冬色の街に吹き来し夜風かな


師走風とん汁つくりて母を待つ


街角に冬色コートあふれをり


草川の落ち葉こぼれて泳ぎ出す


病よ去れこの冬晴れを我がものに


師走風色を掃かれて山眠る


冬至の日死者の葬列短くて


唇の乾きを知りぬ聖樹の灯


立ち食ひのうどんをすするクリスマス


クリスマス春咲く種を求めをり


数え日のワイン飲み干す夕べかな


初雪や枯れ木に白き花のごと


初雪や電話の君は弾む声


年の暮れ烏は何を眺るや


歳晩や酔ひ果てし夜に読書かな


元日や賀状の君は微笑んで


初春や畦道を行く初もうで


初春や祖母の背中の丸くなり


カフェの夜のホットミルクや寒に入る


枯れ園や一輪車の子遊びをり


憂ひ顔都に向けて案山子かな


コスモスや白き歯こぼす君のもの


秋の雲空を覆ひて濃く薄く


秋の暮れ人待ち顔の地蔵かな


うっかりと傘を忘れて秋の雨


立冬はとうに過ぎぬと古老笑む


空色はかくも錆びたり冬の鳥


冬晴れや飛び立つ夢は叶はぬを


花図鑑冬のページは誦んじて


ペダル踏みマフラーの子は風となり


かさこそと踏みゆく落葉語けり


冬の雨缶コーヒーのぬくみかな


冬紅葉窓辺に一葉訪れて


冬晴れの青にも染まず白鳥は


シクラメン記憶の底に火となりぬ


冬鳥の通ひ路追って飛行機雲


傘立ての色どり楽し冬の雨


桜花苦味とともに飲み干せり


秋雨のポストはひとり赤く染み


寝る前の焼酎一献夜長かな


稲妻にワイングラスは光をり


2011.5.11-2014.5.15


軒先に雨垂れ歌ふ夏の夜 (2011.5.11)


長雨は憂き世の浄めビール干す (2011.5.12)


雲間より地に降り立たんと夏星座 (2011.5.13)


石段を添へて登りぬ著莪の花 (2011.5.15)


木漏れ日に竹の落葉の斑かな (2011.5.16)


下り行く濁りなきまゝ苔清水 (2011.5.18)


登る背を朽木と知るや青蔦よ (2011.5.18)


君からの初の奢りはソーダ水 (2011.5.19)


西国の入梅を知る夕べかな (2011.5.23)


走り梅雨そぼ降る空の低さかな (2011.5.23)


草刈りや天道虫を残しをり (2011.5.24)


漸くの天道虫の一歩かな (2011.5.24)


飛翔前天道虫の忘我せり (2011.5.24)


夢醒むる天道虫は飛び消えて (2011.5.24)


缶ビール裏切りの味かく苦し (2011.5.25)


ベクレルの値ともかく鰹喰ふ (2011.5.26)


つばくらめ怠惰咎むる速さかな (2011.5.26)


草刈りや花に恨みの覚えなく (2011.5.27)


山椒魚霊峰の水動かさず (2011.5.28)


置き去りし欲望あまた五月尽 (2011.5.31)


遠足の足並み乱る蛇苺 (2011.6.3)


梅雨の雨神話を一つ拾ひけり (2011.6.9)


電話して仰ぐは同じ梅雨の星 (2011.6.9)


我が星の待てど昇らず梅雨の星 (2011.6.9)


夏至の空青き絵の具のただ一色 (2011.6.22)


水鳥は川面の飛翔涼しさよ (2011.7.11)


夏の夜の甘きワインに虚偽を見し (2011.7.11)


灼き尽くせ酒瓶の底の恥辱をば (2011.7.29)


砂灼くる浜辺の記憶遠くなり (2011.7.29)


やがて雨物憂き予感の晩夏かな (2011.7.30)


片影に距離を失ふ二人かな (2011.8.2)


西行を八頁めくって夜の秋 (2011.8.3)


熱情を含んで冷たしトマトかな (2011.8.5)


親の名を忘れぬごとく原爆忌 (2011.8.6)


軍港に猫裏返り夏終はる (2011.8.7)


熱すぎる番茶飲み干し長崎忌 (2011.8.9)


死にたくない八月九日長崎忌 (2011.8.9)


初秋のまだ重き風山なびく (2011.8.9)


蜩の合唱迎へる家路かな (2011.8.10)


かなかなの遠巻く響きこころやす (2011.8.10)


かなかなや憎しみひとつ忘れけり (2011.8.10)


仏壇に遺影の父も残暑かな (2011.8.10)


秋暑し風の重みを背から受く (2011.8.10)


八月や焼酎一献手紙焼く (2011.8.10)


敗戦忌祖母の握手に力あり (2011.8.15)


桃喰みて明日の憂ひに備へけり (2011.8.17)


待宵や藤村詩集に恋さがす (2011.9.11)


肌寒や酒で胃を焼く夜半かな (2011.10.31)


為政者よ酢橘の果断思ひ知れ (2011.11.6)


ドライジン深酒誘ふ酢橘かな (2011.11.6)


木菟の審判畏る凡夫かな (2011.11.12)


小春日も諏訪の夜空は深くあり (2011.11.12)


褞袍着て日本酒提げて夜道かな (2011.11.12)


冬浅し風に諏訪湖はそよめきぬ (2011.11.13)


別れ歌流すラジオや柳葉魚焼く (2011.11.17)


皿の上柳葉魚の諦念清くあり (2011.11.17)


死に場所も空を選ぶか鷹飄々 (2011.11.18)


泥鰌掘る大地と呼吸を一つにし (2011.11.19)


また一夜寝酒の毒に倒れ伏す (2011.11.20)


黒土に育ちて白き大根かな (2011.11.21)


舞ひ降りて鳩寒影と添ひ歩く (2011.11.22)


朝ひとり星を仰ぐや初氷 (2011.11.22)


緋色した句帳求めり初氷 (2011.11.22)


靴底にべた付く泥の啓蟄や (2012.3.5)


待ち人の現れずして春の月 (2012.3.8)


自由とは何の意味ぞ春の月 (2012.3.8)


独り身の軌道気ままに春月や (2012.3.8)


雛罌粟を手折る女の嫉妬かな (2012.5.27)


分け入れど皐月富士なほ遠き様 (2012.6.10)


俯きて言葉もなくて茄子の花 (2012.6.12)


潮浴びや浮き輪廻らす声高し (2012.7.24)


夕焼けや憤怒もろとも塗りつぶし (2012.7.26)


夜釣船知らぬ仲にも四方噺 (2012.7.31)


茱萸噛んで世間の味と覚えけり (2012.10.4)


日の落つる疾さ恨めし冬近し (2012.11.4)


里の声受話器を置けり冬を待つ (2012.11.4)


晩菊を境涯とせりコップ酒 (2012.11.5)


立冬やコーヒー缶の吹かれ歩く (2012.11.7)


冬の雨振り続けよと投げし恋 (2012.11.11)


浅春や諏訪にさざ波運ぶ風 (2013.3.24)


ぬるき酒ぬるき血のごと春寒し (2013.3.25)


一杯の水が重くて花曇り (2013.4.6)


春荒の過ぎたる空や尚青く (2013.4.7)


花蕎麦や花柱に紅を残しをり (2013.8.15)


毬栗の落ちて転がり無頼かな (2013.10.28)


封切れば木の実こぼれて手紙かな (2013.10.31)


露寒や赤き灯小さく信号機 (2013.11.3)


紅差すや鏡に寄せて冬支度 (2013.11.4)


星一つ流るゝを見て冬支度 (2013.11.4)


憎しみを一つ畳んで冬支度 (2013.11.4)


破芭蕉拭はぬ涙頰の上 (2013.11.5)


この俺を見よと聞こえし破芭蕉 (2011.11.5)


立冬や朝の呼吸は誰も無垢 (2013.11.7)


潤目焼く大海を知る一尾かな (2013.11.8)


浮寝鳥時勢を知らぬ澄まし顔 (2013.11.10)


冬兆す給湯室のくさめかな (2013.11.14)


蓮根掘る背から腕貸す父ありし (2013.11.28)


霜柱踏みつく跡や大に小 (2013.12.5)


伝説を託す父にも聖夜かな (2013.12.24)


独楽ひとつ地軸に添ひて回りけり (2014.4.1)


零れつゝ凝固しつあり氷柱かな (2014.1.18)


夜歩きに星吹き込めて大南風 (2014.5.15)


2015.8.29-


ついぞ見ぬ何処に伝や秋雀 (2015.8.29)


バス停の影長きの秋思かな (2015.10.31)


ストーブの火芯は青し手紙書く (2015.12.12)


小雪舞ふ一粒ごとに光かな (2015.12.12)


暮るゝ日に忘我の刹那薺打つ (2016.1.7)


冬凪や秒針停止ダリの刻 (2016.1.22)


伊予柑やごろりとはすに身を構ふ (2016.2.5)


平手打ちバレンタインの日に喰らふ (2016.2.14)


風止めり今日は野焼ぞ父の告ぐ (2016.2.18)


舞ひ落つも構ふ人無し春の雪 (2016.3.27)


踏まれてもまた踏まれても蕗の薹 (2016.2.28)


蛙飛ぶ小さき反復空遠し (2016.3.5)


踏む土の柔らかき知る春めけり (2016.3.27)


房州は花の知らせや春炬燵 (2016.3.27)


目閉じれば海が見えます麦畑 (2016.5.15)


来し方も知らぬ羽蟻の夜更かな (2016.5.28)


露涼し散歩道から外れをり (2016.8.6)


帽子飛ぶ野中にひとり露涼し (2016.8.6)


敗者には秋に入る日の青き空 (2016.8.6)


空と海上を下へと鰯引く (2016.8.10)


秋の朝パステルカラーの山河かな (2016.8.13)


冬めくや裸木の空風高し (2016.11.9)


練炭の記憶は遠し昭和かな (2016.11.11)


ジャケツ着てハードボイルド気取りし日 (2016.11.28)


二人して風邪気の声の電話かな (2016.12.2)


暮らしには法則のあり浅漬や (2016.12.6)


浅漬や何事もなし日一日 (2016.12.6)


鸚鵡貝ルーペ越しなる字引かな (2016.12.8)


空青し稜線白し十二月 (2016.12.11)


鷹の子の鷹匠ひとりを親として (2016.12.12)


あふぎ見て渡れぬ橋か冬の虹 (2016.12.14)


襤褸市に枕のひとつ残りけり (2016.12.15)


浮寝して死生を忘る凡夫かな (2016.12.16)


深雪の野誰の前にも道はなし (2016.12.17)


湖畔道白息疾しジョガーかな (2016.12.18)


寒苦鳥君のことだと歳時記に (2016.12.19)


降るとまで人には見せて雪催 (2016.12.20)


人肌や師走の市に波となり (2016.12.22)


寒濤に航跡消えて漁船かな (2016.12.28)


山焼や焦土の記憶語る人 (2017.3.6)


風を読み人を頼みて野焼の日 (2017.3.20)


薄氷を透かして光る君となり (2017.3.20)


星堕ちて墓標の生まるものの芽や (2017.3.20)


一村はひとつとなりし初の雷 (2017.3.30)


青柳や靡けどそこを動かざる (2017.4.8)


霾ぐもり淡く垂れ込む青の空 (2017.4.10)


上り来てまた上り行く小鮎かな (2017.4.11)


雀の子飛びて世界の広き知る (2017.4.12)


雀の子高み畏れず巣立ちゆく (2017.4.12)


種案山子十字を掛けて夜空かな (2017.4.16)


子の立てる担任似せし種案山子 (2017.4.16)


病窓の春の鳥して敲きけり (2017.4.16)


白球は内野ゴロにて揚雲雀 (2017.4.19)


通学路茶摘唄して歩く子ら (2017.4.23)


風ふわり仔馬を追いつ追われつゝ (2017.5.3)


空の青やゝ深き知る春の果 (2017.5.3)


ひとひらの残花となりぬ宴あと (2017.5.3)


柔らかき夜風を連れて夏来たる (2017.5.5)


夏芝や踏まれし過去の無きやうに (2017.5.25)


庭箒残されてをり牡丹かな (2017.5.28)


陰日向行きつ戻りつ揚羽かな (2017.7.12)


儚き身忘れし揚羽空の淵 (2017.7.12)


蜩や一本道の先は海 (2017.8.17)


蜩の歌に始まる静けさや (2017.8.17)


手のひらの影なく見えし稲の妻 (2017.8.19)


送行や山河も分かつ風吹きて (2017.8.21)


文月や言葉にならず筆投げる (2017.8.22)


文月や紙飛行機を貴方へと (2017.8.22)


勝相撲力士の背中広きかな (2017.9.1)


一葉落つ螺旋模様の風の跡 (2017.9.2)


一葉落つ余命数へど欠伸せし (2017.9.2)


一葉落つ欠片になれど命かな (2017.9.2)


いとほしき堕落の運命一葉落つ (2017.9.2)


青空を鵙の高音は開きけり (2017.9.3)


散歩道鵙の高音の誘ふまゝ (2017.9.3)


鵙高音耳に残しつ東京へ (2017.9.3)


道楽や釣れた釣れぬも鯊の秋 (2017.9.4)


案山子立つ影が十字を切りし午後 (2017.9.4)


秋の宿求めて歩く砂漠かな (2017.9.5)


ちろろ虫舞ひ飛ぶ夢は歌と消ゆ (2017.9.6)


水の香の覚え新たに白露の日 (2017.9.7)


日月の軌道外れず白露かな (2017.9.7)


一杯の爽涼満ちてコップかな (2017.9.8)


芒野に立ちて靡かずたゞ一人 (2017.9.9)


終着の駅より先の芒野や (2017.9.9)


芒野や父の回忌を数へけり (2017.9.9)


【改】芒野や父の回忌を思ひ出づ (2017.9.9)


秋の空投げど届かず石礫 (2017.9.9)


風乾く蚊帳の別れの日和かな (2017.9.10)


詩をひとつ拾ひて返さむ秋の空 (2017.9.10)


秋の蟻道を択ぶに迷ひ無し (2017.9.11)


小牡鹿やヘッドライトを訝しむ (2017.9.12)


カント読む純理の高み空は秋 (2017.9.12)


秋深夜メール着信サヨナラと (2017.9.13)


白色を銀木犀の正しけり (2017.9.13)


コンサート帰路は急がず秋の声 (2017.9.14)


読経する和尚忘れて秋の声 (2017.9.14)


聞き耳を立てる猫ゐて秋の声 (2017.9.14)


稲殻機こき下ろされて人であり (2017.9.15)


定時日も暮れゆく家路秋思かな (2017.9.15)


夕暮れの信号待ちに秋思ふ (2017.9.15)


時宜を得ぬ選挙ポスター秋思ふ (2017.9.15)


秋思して書き留む余白あと僅か (2017.9.15)


稲殻機千々に別れし地平線 (2017.9.15)


秋の湖鏡のかけら寄せ集む (2017.9.16)


諏訪の地に秋の湖あり湯と酒と (2017.9.16)


水光るコップ一杯秋の湖 (2017.9.16)


天龍は諏訪の涙や秋の湖 (2017.9.16)


図書室の書架に並びて秋の湖 (2017.9.16)


秋の湖何時ぞ海へと巡るらむ (2017.9.16)


図鑑には火山湖とあり秋の湖 (2017.9.16)


嘘だけはここでは言へぬ秋の湖 (2017.9.16)


秋の陽に骨の透けたる金魚かな (2017.9.17)


鉢ごと捨てたき金魚ゐる秋かな (2017.9.17)


白鳥座誰を架けたる十字とや (2017.9.18)


白鳥座子午線に見て舵を切り (2017.9.18)


空翔ける墓標と見えて北十字 (2017.9.18)


湖かなた億光年や白鳥座 (2019.9.18)


白鳥座湖面大きく捕へけり (2017.9.18)


白鳥座急旋回す酔ひてをり (2017.9.18)


掬ぶ手の小さき海や月降りぬ (2017.9.18)


日時計や桜紅葉を指して朝 (2017.9.19)


桜早や紅葉を兆す諏訪湖かな (2017.9.19)


追憶の白夜の国や長き夜 (2017.9.19)


世の隅を突きて新聞虫すだく (2017.9.20)


曼珠沙華血と骨の色交へけり (2017.9.20)


綿菓子や雲へと軽し秋祭 (2017.9.20)


草相撲一本背負ひ決めし児や (2017.9.20)


秋の野にバス停一つ信濃路や (2017.9.20)


コスモスや風を待たずに揺れてをり (2017.9.20)


旅の宿秋風鈴に迎へらる (2017.9.21)


罌粟蒔きぬ地動説には首肯せず (2017.9.21)


罌粟蒔きぬわれに五月を与ふるか (2017.9.21)


初月や家並揃ひ従へり (2017.9.22)


初月や塵界にゐて吠ゆるのみ (2017.9.22)


初月をモニターに見る夜警かな (2017.9.22)


初月の残像消えず夢路かな (2017.9.22)


秋分やひとつひとつと紅く果つ (2017.9.22)


鰡飛ぶや漫漫の海斥けり (2017.9.24)


【短歌】掬ぶ手の小さき海に星降れど待ち人来ぬを泣けよこの月 (2017.9.26)


チェロ弾きの隣家にありて良夜かな (2017.10.5)


下り鮎海は命と知りたるや (2017.10.6)


川床に雌雄秘事めく錆鮎や (2017.10.7)


櫨紅葉真昼の色に焼かれけり (2017.10.12)


雨脚に追はれ旅路の炉火恋し (2017.10.20)


国境に哀歌の流る炉火恋し (2017.10.20)


灯火や枯野の色を掃き集む (2017.10.21)


空色のどこまでも青冬立てり (2017.11.7)


つむじ風踊る朽葉の吾が身かな (2017.11.8)


舞茸や空は握れずたなごころ (2017.11.9)


冬日差すランチルームの欠伸かな (2017.11.10)


日の光風に寄せ来て冬紅葉 (2017.11.12)


枯枝や仰ぎ透かして雲に骨 (2017.11.14)


鰭酒を交はして終へる恋仲や (2017.11.23)


茶の花や蕊の秘密は問はぬもの (2017.12.20)


底冷えや震へに目覚む諏訪夜半 (2017.12.20)


君が目は冬の泉を含みけり (2017.12.21)


百八で足るを知れとや鐘響く (2017.12.31)


フクイチや沢庵噛みつ屠蘇酌みぬ (2018.1.1)


剃刀の頰にひんやり年新た (2018.1.2)


一年を去年の栞に始めけり (2018.1.3)


大社にも淑気ひときは髪挿や (2018.1.4)


賀状来る欠けし一枚案じけり (2018.1.4)


小寒の朝に番茶の湯気立てり (2018.1.5)


小寒や暖気の向かふ影揺るゝ (2018.1.5)


仕事中浮びて一句初仕事 (2018.1.5)


信号機待つも悲しき小寒や (2018.1.5)


小寒や自転公転児に習ふ (2018.1.5)


梯子乗菓子撒き児らの寄り集ふ (2018.1.6)


身一つの梯子乗には空一つ (2018.1.6)


梯子乗見物客も身を反らす (2018.1.6)


閉ざされてなほ淑気満つ諏訪湖かな (2018.1.6) 【写真俳句】


七日粥五臓六腑を新たとす (2018.1.7)


七日粥祖母の覚えと塩加減 (2018.1.7)


貧しきの豊かを知れと七日粥 (2018.1.7)


乞食に畏く捧ぐ七日粥 (2018.1.7)


七日粥雑草喰らひ兵士かな (2018.1.8)


酒場にて独り成人式なりし (2018.1.8)


成人の日にはにかみし日本髪 (2018.1.8)


成人祭憂ひも若くありしかな (2018.1.8)


紋付に威風を借りて成人式 (2018.1.8)


道無くもオリオン宿す空はあり (2018.1.9)


晴眸やオリオンいつも一隅に (2018.1.9)


オリオン座昏き瞳を集めけり (2018.1.9)


オリオン座憶えし齢も忘れけり (2018.1.9)


オリオン座村に一つの望遠鏡 (2018.1.9)


手拭を拾ひて捧ぐ春小袖 (2018.1.10)


哲学徒春の小袖に翻る (2018.1.10)


春小袖歩み整ふ石畳 (2018.1.10)


氷る鐘佳人は笑みを零しけり (2018.1.11)


鐘氷る碁石の白の滲みて朝 (2018.1.11)


鐘氷る遠き伝令いづこへと (2018.1.11)


吹雪来て白き大河の最中かな (2018.1.12)


一抹の吹雪を胸に知らぬ街 (2018.1.12)


初凧や糸巻き回し風彼方 (2018.1.13)


初凧や糸巻き追ひて児の駆ける (2018.1.13)


初相撲小兵大きく手刀切る (2018.1.14)


初相撲負けて嘗めたる塩気かな (2018.1.14)


どんど焼き松竹くべて火の穂伸ぶ (2018.1.15)


燗つけず臓腑浸すや寒造り (2018.1.16)


ひと舐めに夢もうつゝも寒造 (2018.1.16)


牡蠣船の流され行きて二人かな (2018.1.17)


雪明かり逢瀬隠せぬ夜となりし (2018.1.19)


梵鐘や淡き影置く雪明かり (2018.1.19)


寒三日月ふうと冷まして豚汁や (2018.1.21)


寒三日月君がくちびる紅さゝむ (2018.1.21) 【写真俳句】


鰭酒や猪口覗き込む子が隣 (2018.1.22)


蹴飛ばしてラグビーボールカオスへと (2018.1.23)


キックオフラガー高鳴るあの時や (2018.1.23)


土と空もろとも蹴ってラガーかな (2018.1.23)


トライ決めラガーの口に泥の味 (2018.1.23)


尾白鷲眼下小さき俺がゐる (2018.1.24)


犬鷲の虚空に尖る翼かな (2018.1.24)


檻の鷲眼は天空そのまゝに (2018.1.24)


日記買ふ秘事無きやうな顔をして (2018.1.24)


初天神お面のサイズ余りし子 (2018.1.25)


絵馬掛けて菅公ゆかし初天神 (2018.1.25)


春永や馬券売り場に並びけり (2018.1.26)


春永や長編小説読み始む (2018.1.26)


双方がボケてばかりの今万歳 (2018.1.27)


ご当地の種を含めて万歳や (2018.1.27)


万歳や門々巡る笑みと風 (2018.1.27)


大志ある少年もゐて独楽遊び (2018.1.28)


初旅や靴下のみ新調す (2018.1.29)


初旅に宿の女将の饒舌や (2018.1.29)


初旅の人の届けし絵葉書や (2018.1.29)


初旅に北国択ぶ女かな (2018.1.29)


初旅や草の枕に花図鑑 (2018.1.29)


大見得の今か今かと二の替 (2018.1.30)


ドアノブの屍が如冷き日 (2018.1.31)


陽の遠く微笑冷たき美人画や (2018.1.31)


一人ゐて厨冷たしステンレス (2018.1.31)


愛ありや冷たき硬貨握絞む (2018.1.31)


三寒の次はまだかと諏訪郡 (2018.2.1)


南国の四温の便り着信す (2018.2.1)


村一つ寒紅残し銀世界 (2018.2.2)


寒紅や誰ぞ火付けし飛行船 (2018.2.2)


冬惜しむ窓辺の日差し定まりぬ (2018.2.3)


春立つ日諏訪湖渡りし男神かな (2018.2.4)


春の日は遠くにありて今日一日 (2018.2.5)


ポケットに春日探れば銅貨かな (2018.2.5)


斑雪嶺に光陰を見て五十坂 (2018.2.6)


白魚汲む篝に寄せて鰭百千 (2018.2.7)


雪垢の不純を問ひて日の光 (2018.2.9)


山中の迷ひ路にあり蕗の薹 (2018.2.10)


天麩羅の衣香し蕗の薹 (2018.2.10)


蕗の薹舌先浄む酒辛し (2018.2.10)


蕗のたう近眼の君そこここと (2018.2.10)


春セーター照れずに買ひしあの日かな (2018.2.11)


足跡の小さき揃へ麦を踏む (2018.2.12)


足裏に土の膨らみ麦を踏む (2018.2.12)


体重をずしりずしりと麦を踏む (2018.2.12)


春の鳶気流持ち上ぐ情交や (2018.2.13)


翼得て放埒の恋春の鳶 (2018.2.13)


針魚ゐて海のひと粒椀ひとつ (2018.2.14)


潮の香に故郷近し針魚焼く (2018.2.14)


畑焼や過去を灰とし決別す (2018.2.15)


畑焼や熱を帯びたる頰となる (2018.2.15)


畑焼く黒人霊歌胸に鳴る (2018.2.15)


春聯や神戸横浜破裂音 (2018.2.16)


春聯や湯気を開けば中華まん (2018.2.16)


堅香子の耳に入れたし胸の裡 (2018.12.17)


堅香子の花の奥にも陽は届く (2018.2.17)


足許に堅香子揺れて風邪を知る (2018.2.17)


堅香子に花の言葉の三つかな (2018.2.17)


堅香子に跪けども許されず (2018.2.17)


堅香子の花の里へと道尋ぬ (2018.2.17)


小説のヒロイン若し春心地 (2018.2.18)


和歌集や春の心地に始まりぬ (2018.2.18)


罪と罰最終章の春心地 (2018.2.18)


ぽんぽん船曳き波丸し春心地 (2018.2.18)


逍遥の日の陰ごとに余寒かな (2018.2.18)


雨水の日心腑潤す風を待つ (2018.2.19)


身を忍ぶ君を見つけし雪椿 (2018.2.20)


日の光余さず集む雪椿 (2018.2.20)


鬼浅利鬼になるべき時来たる (2018.2.21)


放課後の黒板広し春寒や (2018.2.28)


シャボン玉弾けて空の広きかな (2018.3.1)


双蝶や行く方定む路も無し (2018.3.2)


手延ばして薄紅梅に触るゝ児や (2018.3.3)


海塩にざらつく胸や磯焚火 (2018.3.4)


磯焚火身の上話ひとつ聞く (2018.3.4)


蜷一匹道を残して去り行けり (2018.3.8)


蜷の道人生これさ廻り道 (2018.3.8)


マント脱ぐ風を跨ぎて歩きけり (2018.3.9)


マント脱ぎ第一走者頰はたく (2018.3.9)


桃の日の遠き記憶や少女のひ (2018.3.10)


少年の涙も包む暖雨かな (2018.3.10)


箕をしゃくる天球揺れし蜆船 (2018.3.11)


蝶掴むあまりに薄き羽と知る (2018.3.11)


蝶放つ我が身ひとつが置かれけり (2018.3.11)


3.11あの日春を忘れけり (2018.3.11)


打ち寄する小浪の丸し春疾風 (2018.3.17)


春疾風酒幟のはためき定まらず (2018.3.17)


春疾風恋のひとつも跳び来れ (2018.3.17)


入り彼岸ボサノヴァ揺らすスタバかな (2018.3.18)


入り彼岸スウィングせむとレコード針 (2018.3.18)


入り彼岸アート・ブレーキー緩すぎて (2018.3.18)


入り彼岸彼国彼方へグライダー (2018.3.18)


入り彼岸君が吐息に失速す (2018.3.18)


春三日月石鹸忘れ風呂屋かな (2018.3.19)


春三日月優しき雨の日となりぬ (2018.3.19)


春三日月零さぬやうに降り行けり (2018.3.19)


汚れし身春の三日月さやうなら (2018.3.19)


ピストルに男の疼く春もあり (2018.3.19)


日本史に小さき謎を見つけたり博文撃たれし日は晩秋 (2018.3.19) 【短歌】


門口に辛夷の花や新住人 (2018.3.20)


地下室の四分儀重し春分や (2018.3.21)


春分やドアを開ければ銀世界 (2018.3.21)


竜天に昇る山門開かれり (2018.3.22)


沈丁花香に攫はれて母若し (2018.3.24)


教室に誰知らぬ風春休み (2018.3.25)


明くるまで黒板消せぬ春休み (2018.3.25)


不合格侍となり春休み (2018.3.25)


風車流転予感す十歳や (2018.3.26)


風車われに銀翼与へよと (2018.3.26)


児の笑みを芯に廻りし風車 (2018.3.26)


佐保姫の衣の雲やかしづけり (2018.3.27)


佐保姫に夜の諍ひ星の影 (2018.3.27)


佐保姫や眉弓と見えて奈良の山 (2018.3.27)


蝶にまで翻弄されし男かな (2018.3.28)


蝶ひらり一撃秘めてモハメドアリ (2018.3.28)


展翅さる裸体影なし蝶愁ふ (2018.3.28)


引鶴や空に吊るさる絹衣 (2018.3.29)


引鶴や露西亜に愛の届くかと (2018.3.29)


引鶴や渡世の穢れ忘る白 (2081.3.29)


雁風呂や手の平ほどの波も立つ (2018.3.30)


雁風呂の太平洋に供物かな (2018.3.30)


鬱憤の唾棄さへ恕すシネラリア (2018.3.30)


真実は力なく消ゆ名残雪 (2018.3.31)


ヒルティや朧月夜に閉づ開く (2018.3.31)


朧夜や白日避けて嘘ひとつ (2018.3.31)


嘘ばかり何を今さら四月馬鹿 (2018.4.1)


蛇口より酒溢る待つ万愚節 (2018.4.1)


嘘のカード捲ったら裏も嘘だった (2018.4.1) 【川柳】


春の波眼前にあり胸に寄す (2018.4.2)


春の波ひとつ起こして風は消ゆ (2018.4.2)


春の波海の広きを告げ来たる (2018.4.2)


人の身を陽炎と言ひ君去りし (2018.4.3)


世の全て陽炎ならば踊りたし (2018.4.3)


かぎろひを呼びたく叫ぶ日もいつか (2018.4.3)


かぎろへど思ひ種無く貨物船 (2018.4.3)


星空に陽炎流す明日は晴る (2018.4.3)


テヲアゲロ背に青麦鳥の声 (2018.4.4)


変身を果たせぬカフカ青麦や (2018.4.4)


自決などする訳もなし散る桜 (2018.4.5)


清明や新入社員に同じ姓 (2018.4.5)


菜の花の背丈のほどに八ヶ岳 (2018.4.6)


菜の花や揺れて心を見せにけり (2018.4.6)


雨の日は花瓶を高く捧げる日 (2018.4.7) 【川柳】


初虹や昇る足許工場街 (2018.4.7)


初虹や行方知れずの思ひ人 (2018.4.7)


初虹や惜別の日に見し覚え (2018.4.7)


春の虹脚よりゆると引き揚ぐる (2018.4.7)


原子時計ダリの時報を打てず昼 (2018.4.7) 【川柳】


至らねど足の急くなり初虹へ (2018.4.7)


春の虹十二色もて塗る児かな (2018.4.7)


春の虹山と降り来て風と去る (2018.4.7)


初虹や誰も彼もと人差し指 (2018.4.7)


仏生会誰も生まれし身で迎ふ (2018.4.8)


仏生会修行の僧の早足や (2018.4.8)


濡るゝほど眉は光し甘茶仏 (2018.4.8)


一歩ずつ降りて行くのが未来です (2018.4.8) 【川柳】


あなたの手美しすぎて花瓶です (2018.4.8) 【川柳】


指先は蝶々を留める住所です (2018.4.8) 【川柳】


逃水や道は遠しと現はるゝ (2018.4.9)


微笑みはいつも逃水モナリザや (2018.4.9)


ごらんなさい暗い星ほど正直です (2018.4.9) 【川柳】


球拾ひ草間明るし遅日かな (2018.4.10)


日の光受けて育ちぬ遅日かな (2018.4.10)


遅き日や余白の白き詩集請ふ (2018.4.10)


遅き日や箸も折りたる長議論 (2018.4.10)


割り切れぬ大きな素数発電所 (2018.4.10) 【川柳】


蒲公英や何処に咲けど踏まれざり (2018.4.11)


蒲公英や根ばかり深く刺して咲く (2018.4.11)


蒲公英に囁く児の手菱形や (2018.4.11)


蒲公英の指輪の約束忘れけり (2018.4.11)


散る桜頸に添ひて消えゆけり (2018.4.12)


掻き毟る君にひと蹴り散る桜 (2018.4.12)


どこの誰もあなたの詩まで書きませんよ (2018.4.12) 【川柳】


身から出た錆みたいな詩が好きです (2018.4.12) 【川柳】


春雨やパと咲く傘の右左 (2018.4.13)


言葉という言葉が一番好きです (2018.4.14)


触れるたび水の感触変わります (2018.4.14) 【川柳】


葱坊主やうやく酒をおぼえたか (2018.4.14)


起立礼横一列や葱坊主 (2018.4.14)


捨て置かる身こそ咲きけれ葱の花 (2018.4.14)


ソースが詩のロボットなら人間です (2018.4.14)


目刺干す柔な刀身風に緊む (2018.4.15)


居住まひを正せと並ぶ目刺かな (2018.4.15) 【川柳】


世に喰はる身でありながら目刺食ふ (2018.4.15)


春の風邪有給ひと日映画館 (2018.4.17)


穀雨の日ゆくりと丸く爪を切る (2018.4.20)


第四のコーナー抜けて草若葉 (2018.4.21)


若草馬高原の町人と牛 (2018.4.21)


牛糞を踏んで泣く児の草若葉 (2018.4.21)


蝌蚪の紐繋がる兄弟姉妹かな (2018.4.22)


蛙子の尾の生ゆるにも揃ひけり (2018.4.22)


トタン屋根叩く音して梅の鉢 (2018.4.22)


蛙の子これも輪廻と少年や (2018.4.22)


山葵田やバス停の先谿の底 (2018.4.23)


付け過ぎの山葵に泣けて浪人生 (2018.4.23)


束の間に清流停む山葵田や (2018.4.23)


山降りる田子に声掛く畑山葵 (2018.4.23)


山葵田へ此処よりいよゝ登りかな (2018.4.23)


遠足のバスに酔ふ児や最前席 (2018.4.24)


遠足やお菓子の交換ビスケット (2018.4.24)


遠足や引率教師の長講釈 (2018.4.24)


遠足やカレンダーには二重丸 (2018.4.24)


遠足の児らに構はず虎は寝る (2018.4.24)


雨の日の動物園に誘ってよ (2018.4.24) 【川柳】


遠足に出てったきりの私です (2018.4.24) 【川柳】


百千鳥君が声のみ聞こえけり (2018.4.25)


雨音や刻々変はる百千鳥 (2018.4.25)


山腹のベンチに掛けり百千鳥 (2018.4.25)


旋律は一羽一羽に百千鳥 (2018.4.25)


恋情の唄を探して百千鳥 (2018.4.25)


教室に百千鳥聞く教師かな (2018.4.25)


百千鳥この一時を惜しみけり (2018.4.25)


茶摘みの手空を掴むて魔法の手 (2018.4.26)


手拍子や音楽室から茶摘唄 (2018.4.26)


金盞花工場群に赤色灯 (2018.4.26)


裸足して雀隠れの擦り傷や (2018.4.27)


腿ちくり細魚刺し抜くレジ袋 (2018.4.28)


細魚の身ますぐの箸にほぐされり (2018.4.28)


目を閉じてなほ胸の裡朧月 (2018.4.29)


朧月内緒話を持ち掛けり (2018.4.29)


朧月鉄路の先に無人駅 (2018.4.29)


朧月電話にひとつ吐息聴く (2018.4.29)


砂浜に足を取られし緑立つ (2018.4.30)


流木に打ち寄す波や緑立つ (2018.4.30)


絵葉書に息災とあり緑立つ (2018.4.30)


緑立つサッカーボール蹴り上ぐる (2018.4.30)


魚島や船団互ひ見え隠れ (2018.5.1)


魚島や木造船の軋む音 (2018.5.1)


魚島や大漁旗と帰り来ぬ (2018.5.1)



魚島に逸る心の舵輪かな (2018.5.1)

躑躅見て世間話も咲きにけり (2018.5.2)


バスの旅蓮華躑躅や高原へ (2018.5.2)


風の波躑躅の揺れて海を見し (2018.5.2)


躑躅園話の種と立ち寄りぬ (2018.5.2)


春日傘させば淑女と見えにけり (2018.5.3)


画家描く古都に二三の春日傘 (2018.5.3)


Gパンに春日傘して若き人 (2018.5.3)


優男連れ立ち競ふ春日傘 (2018.5.3)


やうやくに社交辞令も暮れの春 (2018.5.3)


暮れの春推理小説落着す (2018.5.3)


春日傘陰に身を置く人の妻 (2018.5.4)


股座に逆富士なる潮干狩 (2018.5.4)


髭剃らる立夏と聞きし床屋かな (2018.5.5)


夏立ちぬ洗濯物を陽の透けり (2018.5.5)


今朝の夏詩集を捲る風吹けり (2018.5.5)


筍や土の膨らみ虎視眈々 (2018.5.6)


夜を数ふ一人の身には影ひとつ月傾きて酒よ溢れよ (2018.5.6) 【短歌】


桐の花父祖伝来の語り種 (2018.5.7)


醒め口に目薬差して聖五月 (2018.5.7)


たまの嘘許したまへと五月の日 (2018.5.7)


修二忌に遅れて気付く五月かな (2018.5.7)


人生の魔法の解けし五月かな (2018.5.7)


財布拾ふ交番までの五月かな (2018.5.7)


バード・デイ雀を食った口で云ふ (2018.5.10)


蟻地獄血痕ひとつ残さざる (2018.5.10)


船尾より卯波騒がす連絡船 (2018.5.11)


海峡を卯波の占めて島遠し (2018.5.11)


卯月波真白き帆布風の数 (2018.5.11)


卯月波手紙の続き読まず捨つ (2018.5.11)


ドロップ缶カラコロ鳴らす皐月かな (2018.5.12)


新茶古茶交々の世と認めり (2018.5.13)


平坦を何より憎み地球儀にスパイス求む辺遠の道 (2018.5.13) 【短歌】


夏場所や郷土力士の勇み足 (2018.5.13)


夏場所や土産はこれと佃煮屋 (2018.5.13)


巣立鳥いつの間にやら恋もして (2018.5.13)


巣立鳥電線までの初飛行 (2018.5.13)


巣立鳥一羽の発てば次々と (2018.5.13)


軽鴨の挨拶抜きに皇居かな (2018.5.13)


夏鴨や愛の唄さへ嗄れ声 (2018.5.19)


卯の花を地上の雲と触れにけり (2018.5.15)


四つ辻の卯の花指して道案内 (2018.5.15)


卯の花や罪も咎めず白く咲く (2018.5.15)


匙の先揺るゝ身頂く心太 (2018.1.16)


心太茶屋の品書き擦れをり (2018.5.16)


菖蒲園古戦場とも聞き及ぶ (2018.5.17)


籐椅子や股まで通る風のあり (208.5.17)


籐椅子や風に身を置く猫太し (2018.5.17)


香水にまた騙されて一人旅 (2018.5.18)


日は薄暑風は爽々内野ゴロ (2018.5.19)


裄丈が百円玉の身空にも財布開かば三枚の月 (218.5.20) 【短歌】


初鰹諍ふ箸に母静か (2018.5.24)


君が胸蛇の棲むやと狂ほしき (2018.5.30)


衣更抽斗奥のナフタレン (2018.6.1)


相応しき日和となりて衣更 (2018.6.1)


新しき歯ブラシ卸す衣更 (2018.6.1)


袖口に風の抜けをり衣更 (2018.6.1)


四十雀ツピツピツピと恋の雄 (2018.6.2)


四十雀俺さへ締めぬネクタイや (2018.6.2)


麦笛や君に届かぬ知りながら (2018.6.3)


麦笛や音楽教師の児に倣ふ (2018.6.3)


麦笛や調子外れの高き音 (2018.6.3)


麦笛にアニソン吹かる平成や (2018.6.3)


打ちし枝実梅の重み伝へけり (2018.6.3)


青梅のコロコロコロとシンクかな (2018.6.3)


青梅と氷砂糖に暮るゝ日や (2018.6.3)


青梅を拾ふエプロン一杯に (2018.6.3)


麦笛の翁一躍人気者 (2018.6.3)


野茨に墓標尋ぬる小径かな (2018.6.5)


雨降りて田に水紋の芒種かな (2018.6.6)


老鶯に尋ねて村の童女かな (2018.6.7)


夏の霧修験者走る息近し (2018.6.7)


宿の貸す番傘重し梅雨に入る (2018.6.7)


若竹や髭を生やして高校生 (2018.6.8)


穢れし手憚りもなく清水受く (2018.6.9)


清水汲むペットボトルの透けし朝 (2018.6.9)


世を洗ふ清水の無くて煙草かな (2018.6.9)


清水汲む這ひつくばつて空に尻 (2018.6.9)


田植機や先祖墓をば通り過ぐ (2018.6.9)


荒梅雨や傘も折りたし競馬場 (2018.6.10)


梅雨の空飛行船など見えませぬ (2018.6.10)


時の日やダイヤ誦んず若き車掌 (2018.6.10)


どくだみの十字に契る恋もあり (2018.6.10)


海の日やテトラポットの浜となり (2018.6.11)


色萎ぶ紫陽花裁ちて庭しかな (2018.6.11)


門前に寺の縁起と額紫陽花 (2018.6.11)


派手者の長き沈黙紫陽花や (2018.6.12)


入梅を前口上の電話かな (2018.6.12)


入梅やネットショップにハンモック (2018.6.12)


夏料理うはさ話は終へにけり (2018.6.17)


夏料理ますぐに置かる箸一膳 (2018.6.17)


異邦へと飛び立つ君は機上にて未来載せたる一筋の雲 (2018.6.17) 【短歌】


虹の日の出逢ひを忘る君とゐる (2018.6.21)


番外地錆びし錠前白夜かな (2018.6.23)


片足を富士に隠して虹の立つ (2018.6.23)


ドロップを落とす度ごと虹の色 (2018.6.23)


虹立ちて消ゆるまでの間村に声 (2018.6.23)


赤潮や押し黙る人笑ふ人 (2108.7.5)


手の平に青空透けし蝉の殻 (2018.7.17)


軽すぎる玩具となりて空蝉や (2018.7.17)


緑陰も腋の濡れをる熱波かな (2018.7.18)


バス停は緑陰にありコーラ干す (2018.7.18)


板書する禿頭教師汗光る (2018.7.19)


打ちし枝青梅の重み伝へけり (2018.7.20)


草いきれ草に生まれし心地かな (2018.7.21)


夏暖簾富士の頂隠しけり (2018.7.27)


朝焼けやプラットホームで酔ひ覚めし (2018.7.30)


風死せりカルピス薄く溶きて昼 (2018.7.31)


水と塩補給する身の原爆忌 (2018.8.6)


西瓜食ふ甘き血潮を吸ふが如 (2018.8.8)


井戸水のコップ結露す秋暑かな (2018.8.17)


ベンチよりボール蹴返す残暑の日 (2018.8.17)


蟋蟀の初音を聴きつ夜明前 (2018.8.18)


朝顔や観察日記の遠き日々 (2018.8.18)


朝顔の蔓の渡れぬ青き空 (2018.8.18)


朝顔や牛乳瓶に届きさう (2018.8.18)


夕立の過ぎて水の香残しけり (2018.8.18)


蟷螂に斬られて痒し指の先 (2018.8.19)


蟷螂の守るもの無き強さかな (2018.8.19)


祈り虫首を傾げつ鎌合はす (2018.8.19)


山国の櫓は高し踊かな (2018.8.23)


気が付けばシャツの乾きや処暑の風 (2018.8.23)


夢に咲き現に萎ぶ木槿かな (2018.8.25)


吊革に下がる鬼の子声も無し (2018.8.26)


秋日暮れ雷鳴嶺の彼方より (2018.8.27)


秋の雷盆地の町に残響や (2018.8.27)


一日の限りを説きて法師蝉 (2018.8.28)


梨を捥ぐ夢路を忘る重みかな (2018.8.29)


桐一葉風の行方を尋ねけり (2018.9.4)


日記帳余白を埋めて蚯蚓鳴く (2018.9.5)


蚯蚓鳴くゴビの流砂は寄せ来る (2018.9.5)


悔恨を水と飲み干す蚯蚓鳴く (2018.9.5)


Rising dragon


Up into heaven


Temple gate opened. (2018.9.8)


canned beer:


taste of treachery


thus bitter (2018.9.8)


after a concert


I listen to whispers of autumn


on my way home (2018.9.8)


a paulownia leaf is


looking for the place


the wind has gone  (2018.9.8)


竹の春朽ゆく世にも青きかな (20198.9.10)


古書捲る一項ごとに秋の色 (2018.9.12)


furning over an old book


deepen autumn colour


every page (2018.9.12)


不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心


石川啄木


I throw myself down


on the grass garden of


Kozukata castle,


the sky breathes in


my teen-age heart.


Takuboku Ishikawa (1886-1912) (2018.9.12)


かくれんぼ三つかぞえて冬となる


hide-and-seek:


on the count of three


it's winter.


Shuji Terayama (1935-1983) (2018.9.15)


Orion:


a telescope


in our village (2018.9.16)


among his friends


playing tops spinning,


an ambitious boy does it too. (2018.9.19)


コスモスの波打ち寄す帰り道 (2018.9.20)


I front a wheat field,


and close my eyes.


The ocean can be seen. (2018.9.20)


蛇穴に入る森に小径を残しけり


a snake gets in a hole


leaving the faint pass


in the forest (2018.9.21)


曼珠沙華血と骨の色交へけり 〈再掲〉


equinox flowers:


bloody colours meets


bone's one (2018.9.22)


不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心


石川啄木


I throw myself down


on the grass garden of


Kozukata castle,


the sky breathes in


my teenage heart.


Takuboku Ishikawa (1886-1912) (2018.9.22)


〈訳文を修正させていただきました。〉


竜胆や風落ち来る空深し


芥川龍之介


swaying gentian flowers:


the winds sweep down from


far in the sky.


Ryunosuke Akutagawa (1892-1927) (2018.9.23)


《沙羅の木》



褐色の根府川石に


白き花はたと落ちたり、


ありとしも青葉がくれに


見えざりしさらの木の花。


森鴎外


(褐色/ かいちろ)


《 A sal tree 》


On the path paved with indigo Nebukawa stone.


a white petal has fallen short.


Even if the flowers are coming out overhead,


the green leaves hide them.


Nobody can see the flowers of sal tree.


Ogai Mori (1862-1922) <2018.9.24>


【川柳】雨の日は花瓶を高く捧げる日 〈再掲〉


raining hard:


it's the day to hold a flower vase up


in both hands. <2018.9.25>


菖蒲園古戦場とも聞き及ぶ 〈再掲〉


the sweet flag garden,


I hear this place is


an ancient battlefield as well. <2018.9.25>


秋さびし皿みなわれて納屋の隅


萩原朔太郎


lonely autumn:


the plates are broken all, and thrown in


the corner of a shed.


Sakutaro Hagiwara (1886-1942) <2018.9.26>


秋さびし皿みなわれて納屋の隅


【Revised Traslation】


the plates, have got rusty to autumn colors,


are broken all, and thrown in


the corner of a shed.


Sakutaro Hagiwara (1886-1942) <2018.9.26>


あさがほの裏を見せけり風の秋


森川許六


morning glories


showing the back of petals


in the windy autumn


Kyoriku Morikawa (1656-1715) <2018.9.28>


秋曇り寄り添ふ影の薄くなり


cloudy autumn:


a pair of shadows to snuggle up to is


drawing a faint shape. <2018.9.28>


鰡跳ぶや漫漫の海斥けり 〈再掲〉


a striped mullet


leaps up, and turns away


a boundless ocean. <2018.9.29>


目閉じれば海が見えます麦畑 〈再掲〉


【Revised Translation】


I front a wheat field,


and close my eyes.


the ocean can be seen. <2018.10.4>


胸焦がし灯火親しむカフカかな <2018.10.6>


山越えの盆地の村に空高し <2018.10.7>


burning his heart,


under a desk lamp,


Kafka is. <2018.10.7>


going over a mountain


it's the village of the basin here


the sky is high <2018.10.7>


ネーブルの香が告ぐ君の目覚めかな


a fragrance of


navel oranges tells me


your waking <2018.10.9>


つばくらめ怠惰咎むる速さかな 〈再掲〉


the speed of


swallows flying in the sky


blames me for sloth <2018.10.9>


路傍にて躓く石に秋思かな


by the roadside,


I stumble on a stone, and feel


a melancholy mood <2018.10.10>


【川柳】亡祖父の口真似をして父説教


imitating deceased grandfather's


way of speaking,


father lectures me. <2018.10.10>


地上には三日月倣ふ君の眉


on the ground,


imitating a crescent moon,


your eyebrows. <2018.10.10>


落ちさうで動かぬまゝの露の身や


though a dewdrop seems about to fall,


staying static on a leaf,


it's just my life. <2018.10.11>


バス旅やでこぼこ道に紅葉揺る


a journey by bus:


the road has a rough surface.


autumn leaves shaking. <2018.10.12>


陶然と月の光に浸りけり


litening with ecstacy,


bathed in


Moonlight. <2018.10.13>


burning his heart,


under a desk lamp,


Kafka is. <2018.10.14>


ランプ一つ消さば残さる星月夜


after blowing out a lamplight,


a bright starry night


remains. <2018.10.14>


【自選五句】


竜天に昇る山門開かれり


缶ビール裏切りの味かく苦し


コンサート帰路は急がず秋の声


オリオンや村に一つの望遠鏡


大志ある少年もゐて独楽遊び


2018年4月1日


MY SELECTION



rising dragon


up into heaven,


temple gate opened.



a canned beer:


taste of treachery


thus bitter



after a concert


I listen to whispers of autumn


on my way home



Orion


a telescope


in our village



among his friends


playing tops spinning,


an ambitious boy does it too. <2018.10.15>


鳥の羽秋思にも似て風の中


my melancholy mood is


cousin to a feather.


Blowin'TheWind <2018.10.16>


【改作】


羽一片秋思にも似て風の中 <2018.10.17>


新蕎麦に薬味持参の蕎麦屋かな


new buckwheat noodles:


bringing my favorite relish,


run into the restaurant.


【Revised】


new buckwheat noodles:


with my favorite relish,


run into the restaurant. <2018.10.18>


虹の日の出逢ひを忘る君とゐる


our first encounter, the day when the rainbow appeared—


you don't remember it,


and are at my side now. <2018.10.19>


細流や紅葉の筏流れ行く


a narrow brook—


a raft of autumn leaves


swept downstream <2018.10.19>


細道や乞食巡礼秋の果て


on my narrow road,


as a begger and pigrim,


life is close to the end of autumn. <2018.10.19>


花すすき誰も知らぬ間に咲き果てり <2018.10.20>


しゃっくりの度ごと寝相月へ向く


each time I hiccup in bed,


turn sleeping posture


to the moon. <2018.10.22>


喧嘩売り負けて泣く子に空高し


for the crying boy who


engineered a quarrel and lost,


a high sky. <2018.10.23>


"酒と薔薇"遠き日となり秋の暮


wallowing in Vine and Roses—


The Days passed, and


it's late autumn now. <2018.10.25>


【川柳】見え透いた嘘と知りつゝ差すルージュ


even though you know that


tells an obvious lie,


you put on lipstick. <2018.10.25>


早生蜜柑生気戻りて黄色き手


early-ripening oranges


restore my spirit, and


hands are dyed yellow. <2018.10.26>


初冬や白き胸して帆掛船


early winter—


the white breast of


a sailing craft <2018.11.8>


藪の中歌を忘れし冬の虫


in a thicket,


winter insects lost


their songs. <2018.11.10>


冬の虫思ひあぐねて緩歩かな


a winter insect—


at a loss, and


walks slowly. <2018.11.10>


朝霜や君の影踏む音軽し


morning frost—


stepping on your shadow,


it sounds lightly. <2018.11.23>


子守柿長者の家も風まかせ <2018.11.23>


熟れ時を忘れてひとり子守柿 <2018.11.23>


ペン先の乾きに気付くからつ風


a strong dry wind—


I notice that my pen has


run out of ink. <2018.11.23>


巡礼や約束の地は雪と聞く


pilgrims—


the end of their journey is


snowing now. <2018.11.25>


おでん酒お前初めて九州弁 <2018.11.26>


熱燗やちびりちびりと胸の裡


hot sake—


drinking in little sips,


pour out my heart. <2018.11.27>


炬燵猫獣を忘れ丸くをり <2018.11.29>


枯葉落つ接吻のごと地に触れぬ


dead leaves fell, and


toched the ground


as if they kissed. <2018.12.1>


漆黒の闇の世なれど冬日和


considering that the world is 


in impenetrable darkness,


it's a calm, clear winter day strangely. <2018.12.3>


蕪洗ふ丸き貌さへ愛しむ


washing turnips—


people even treat the round faces


with kindness. <2018.12.4>


焼芋屋美声の主は皺深し <2018.12.8>


手に降りて淡き期待と消えし雪


like my faint expextations,

falling snow melts in


the palm of my hand. <2018.12.16>


咳をしても一人


尾崎放哉


even if I cough,


I am alone.


Hosai Ozaki (1885-1926) <2018.12.27>


甘栗をむけばうれしき雪夜かな


芥川龍之介


I peel sweet roasted chestnuts,


so I'm happy


at snowy night.


Ryunosuke Akutagawa (1892-1927) <2018.12.17>


月が明るくて帰る


荻原井泉水


the moon is bright—


I come home


Seisensui Ogiwara (1884-1976) <2018.12.19>


旅に病で夢は枯野をかけ廻る


松尾芭蕉


while falling ill in a journey,


I rush around a desolate field


in my dream.


Basho Matsuo (1644-1694) <2018.12.20>


伝説を託す父にも聖夜かな 【再掲】


for a father who leaves


the legend to his children,


it's Christmas Eve, too. <2018.12.24>


クリスマス春咲く種を求めをり 【再掲】


On Christmas,


I buy the seeds which


bloom in spring. <2018.12.24>


空青し書棚にひかり年の暮 <2018.12.30>


熱帯魚微睡む眼年の果 <2018.12.30>


冬の雷夢想家の胸裂かれけり


a winter thunderbolt


breaks the heart of the man who


indulges in daydreaming. <2018.12.30>


《2018年自選》


【俳句五句】


磯焚火身の上話ひとつ聞く


草いきれ草に生まれし心地かな


朝顔や牛乳瓶に届きさう


一抹の吹雪を胸に知らぬ街


成人祭憂ひも若くありしかな


【川柳】


雨の日は花瓶を高く捧げる日


【短歌】


裄丈が百円玉の身空にも財布開かば三枚の月 <2018.12.30>


長湯して爪を切りけり晦日蕎麦 <2018.12.31>


置き手紙五行走らす初茜 <2019.1.1>


七日粥雑草喰らひ兵士かな 【再掲】


a rice porridge with the seven herbs of spring—


if I eat these weeds,


may I feel the mind of the soldiers? <2019.1.1>


上気して足元狂ふ初湯かな <2019.1.2>


雪見酒顔の火照りを見合わせり


while enjoying a snow scene


we drink sake and


look at each flushed faces <2019.1.2>


初空や風雲待ちて籠の鳥


the New Year's Day sky—


caged birds are waiting for


the winds and clouds. <2018.1.3>


花屋出で満月に年立ちにけり


松浦為王


after leaving the flower shop,


while meeting the full moon,


I saw that it was the New Year's Day.


Io Matsuura (1882-1941) <2019.1.3>


箸先は福神漬の四日かな <2019.1.4>


四日ゐて主顔なる甥の髭 <2019.1.4>


縄綯ひて命を綯ひて古老かな


an old person—


twisting a straw rope


into the life <2019.1.7>


障子越し石畳行く下駄の音


over a paper sliding door


I hear the sound of the clogs


somebody walking the stone pavement <2019.1.8>


我雪とおもへぱかろし傘の上


榎本其角


on my straw lampshade hat—


if I think it my own,


the snow is not so heavy.


Kikaku Enomoto (1661-1707) <2019.1.8>


冬の鳥雲間の青へ飛び失せり


winter birds—


flying to the sky blue between clouds


and disappeared <2019.1.9>


餅焼けてこげ目香し厨かな


baking rice cakes—


burnt surfaces give the nice scent


which is filling my kitchen up


風花や葉書に綴る北の街 <2019.1.11>


snowflakes—


the north town to write on


a postcard <2019.1.20>


城跡に客を迎へし冬菫 <2019.1.12>


寒稽古犬駆け回る弓道場 <2019.1.13>


北風や紙飛行機に空深し


north winds


drive a paper plane into


the far sky <2019.1.14>


枯芝にひとり流さる波間かな


between the waves of


the withered lawn grass—


drifting alone <2019.1.15>


雪凍てぬ月光の片めのまへに


飯田蛇笏


snow has frozen, and


the fragment of moonlight


appears in front.


Dakotsu Iida (1885-1962) <2019.1.17>


地吹雪や馬のいななき遠く聞く


a snowstorm—


I hear a horse neigh from


far away <2019.1.20>


淋しさの底ぬけて降るみぞれかな


内藤丈草


the bottom of the loneliness


comes out, and


it's sleeting now.


Joso Naito (1662-1704) <2019.1.20>


冬銀河君が旋毛の在処かな


the winter Galaxy—


I know where your hair whorl


is kept <2019.1.21>


髪掻上げつ歩く君霰追ふ


you walk while


pushing back hair


graupel follows <2019.1.21>


鉄橋に夢ほど淡し冬の虹


over a railway bridge


a winter faint rainbow appears


like a dream <2019.1.22>


吊橋や峡谷渡る風の冴ゆ


on a suspension bridge


the winds crossing the valley are


clear and cold <2019.1.22>


切っ先に冬の蠅ゐて覚悟かな <2019.1.27>


冬鳥やロンドン遠しボウイ聴く


winter birds—


I listening to the songs of Bowie


in a far-off place from London <2019.1.30>


光の矢冬三日月の弓を引く


arrows of light—


a winter crescent moon


drawing the bow <2019.2.2>


梅探る心許なき細き径 <2019.2.3>


探梅行孫に引かれて爺やかな <2019.2.3>


鶴啼くや声を合わせて君を待つ


crying cranes—


just like me, they long to be


close to you. <2019.2.3>


立春に託け手紙長くなり


using the beginning of


spring as an excuse,


I write a lengthy letter. <2019.2.4>


てふてふひらひらいらかをこえた


種田山頭火


flying butterflies—


gone over a tiled roof


flutteringly


Santoka Taneda (1882-1940) <2019.2.4>


出でて耕す囚人に鳥渡りけり


嶋田青峰


outside a jail—


birds crossing the sky over


convicts plowing the field


Seiho Shimada (1882-1944) <2019.2.4>


悠々たる雲を従へ雪解富士


the snow is melting, and


Mt.Fuji conquers


even deliberate clouds. <2019.2.5>


砂漠行く口に含めし春の水


on the road to


dessert, I include vernal water


in my tongue. <2019.2.6>


何と言ふあて無き旅に雪の果つ


without any definite object,


I'm away on a journey.


the last snow in this season is falling now. <2019.2.7>


Crime and Punishment—


reading the last chapter


I can feel spring <2019.2.10>


おもひやる余寒はとほし夜半の山


芥川龍之介


far away beyond that mountain, you are living.


I sympathize with you in the lingering cold.


it's midnight now.


Ryunosuke Akutagawa (1892-1927) <2019.2.11>


ランボーを五行飛びこす恋猫や


寺山修司


a cat in love—


jumping over the five lines of


Rimbaud's poem


Shuji Terayama (1935-1983) <2019.2.12>


【和歌】


春風の花を散らすと見る夢は覚めても胸の騒ぐなりけり


西行


even if I wake from


the dream to see a spring breeze


scattering flowers,


uneasiness stays


in my mind.


Saigyo (1118-1190) <2019.2.12>


芝焼や昇る煙の青と消ゆ <2019.2.18>


水筒と双眼鏡の春山や <2019.2.19>


レモネード春光降りて増す酸味 <2019.2.19>


水掬ふ喉元過ぐる春の川 <2019.2.19>


マッチ擦る夜空に逃げて朧月


I strike a match—


the light escapes to the night sky


the hazy moon rises <2019.3.1>


a hazy moon—


I listen to just one sigh


on the phone. <2019.3.2>


ストローを恋敵へとしゃぼん玉


I orient a straw toward


a rival in love


and blow soap bubbles <2019.3.4>


風と鳥径の交はる巣箱かな <2019.3.4>


巣箱一つ据ゑて高みを眺めけり <2019.3.4>


啓蟄や雨音のやゝ近くなり <2019.3.6>


三月十日あの日を語る父でした <2019.3.11>


饂飩屋の暖簾くゞれば春場所や <2019.3.28>


ときめきを柏落葉に数へけり <2019.3.28>


花種を蒔く手に残る土の香や


sowing a flower's seeds—


a faint smell of the soil


remains in my hands. <2019.3.31>


my forefinger—


the address that I put


butterflies on. <2019.4.2>


【Revised】


my forefinger—


the address that I catch


butterflies. <2019.4.4>


春山を超えし君には過去も無し <2019.4.3>


緩やかに下れば里へ春の山 <2019.4.3>


stick'em up!


green wheat and bird's voice


from behind <2019.4.3>


your hand


so beautiful, and


perfectly a flower vase <2019.4.5>


山並に白きを残し晴明や <2019.4.5>


空は抜け風は鋭し晴明や <2019.4.5>


泥飛ばす悪馬の跳ねて厩出し


splashing mud—


a vicious horse prances, after


putting him out of the stable. <2019.4.5>


花冷えや二つ並びし人の影 <2019.4.8>


君の貌仄白く咲く花冷えや <2019.4.8>


花冷えにやゝ濃く淹れし紅茶かな <2019.4.8>


接木され老木呼吸新たとす


a veteran grafted—


breathing


fresh air <2019.4.9>


黒髪の君残されし芝萌ゆる


the grass sprouts—


you're left there with


black hair. <2019.4.10>


後毛のそよめき仄か風光る


wind shines—


your straggling hair


rustles faintly <2019.4.10>


淡雪やテールランプの赤泌むる


light snow—


passing tail lamps


vivid red <2019.4.10>


サイネリア君と集めた飛行船


flowers of cineraria—


you and I gathered


just the airships. <2019.4.11>


燕来る貿易風を知る羽や


swallows come—


their wings might know


the trade winds. <2019.4.12>


街角につむじ吹きけり春は行く


on a street corner—


vortexes blow and


spring goes <2019.4.13>


初虹やいづこと知れず消え失せり


the first rainbow


in the season disappears


nobody knows where <2019.4.14>


真夜中にライブのはねて花曇


around about midnight


a hazy sky in the cherry blossom season


when I left a music pub <2019.4.14>


春の波果なく訪ぬ浜辺かな


spring waves—


endless arrivals of them


wash the sands. <2019.4.15>


蓬摘みしあゝあの道アスファルト <2019.4.16>


風の来て遅れて揺るゝ花影かな


the wind comes


the shadows of the cherry blossoms


swaying delayed <2019.4.16>


秘められて虚空となりぬ花の奥


considering to be a secret


the depths of the cherry blossoms


become the void <2019.4.16>


春愁にわづか微笑む仏かな


in spring melancholy


with the ghost of a smile


a Buddhist statue is <2019.4.16>


春眠し途切れ/\の夢見かな


in sleepy spring


I have fragmentary


dreams <2019.4.17>


ミヨソティスあて無き手紙書きゆけり


a forget-me-not—


writing an aimless letter to


send out <2019.4.17>


あれやこれ積読整理春深し <2019.4.18>


あたたかし甘き酒請う心地かな


It's a fairly warm day


I feel like asking for


sweet sake <2019.4.18>


甘党の父へ供へし桜餅 <2019.4.19>


生きるべし花の散るとも散らぬとも


life goes on


cherry blossoms being either scattered or not


it doesn't matter <2019.4.19>


the night veiled in a hazy mist


staying out of the light of day


I tell a fiction <2019.4.20>


春雨の雨脚見えず海の上


芥川龍之介


the intensity of


the spring rain can't be seen


at sea


Ryunosuke Akutagawa (1892-1927) <2019.4.21>


激情を菊植え終へて水となす


after planting some


chrysanthemums, my vehement passions


convert into water. <2019.4.23>


反復を暮らし行きけり望潮 <2019.4.24>


風車風に五色を添へにけり


a whirling wheel


adds the five colours to


the wind. <2019.4.24>


まろびては鼻の先なる芝桜 <2019.4.25>


the feel of water


changes whenever


I touch with it. <20190.4.25> 【senryu】


火山湖に真珠沈めて春の夢


In the volcanic lake


I sink a pearl and have


a spring dream. <2019.4.26>


春意満つためらひ一つ了とせり


full of spring mind—


I bring my vacillation to 


the end. <2019.4.26>


ゴールデンウィーク鈍行列車の旅と酒 <2019.4.27>


ゴールデンウィーク温泉街のそぞろかな <2019.4.7>


少年に読書気怠し春休み


during spring vacation,


reading is languid for


boys and girls. <2019.4.28>


御開帳秘仏に優し陽の射しぬ <2019.4.28>


満天星や揃ひて揺るゝ風ひとつ


a gust of wind—


flowers of white enkianthus


swaying all together <2019.4.29>


城跡に往時の名残春の風


in site of a castle


spring winds blow like


the vestiges of old times <2019.4.29>


四月尽思へば遠し昭和かな


the end of April—


come to think about it


Showa goes far away <2019.4.30>


競漕や水音もなく一文字


a regatta


without the sound of water


in a straight line <2019.4.30>


風船を放てば空の色づきぬ


when you release


balloons, they colour


the empty air. <2019.5.1>


せせらぎに春のカデンツァ聞こえけり


as the murmur of


a little stream, I listen to


the cadenza of spring. <2019.5.1>


春駒や瞳に含む草の原 <2019.5.2>


通勤路雀隠れを踏みし朝 <2019.5.3>


蒲公英や墓苑に星を鏤めり


dandelions—


starring


a cemetery <2019.5.5>


坂越えの茶店に至る春の汗 <2019.5.5>


兄弟の回り将棋の端午かな <2019.5.5>


白き帆の膨らむ湖や夏来る


on the lake


a white mast swelling out—


summer has come <2019.5.6>


禅問答筍飯で落着す <2019.5.7>


クレマチス仮の世にさへ微笑みぬ


The flowers of the clematis


even in this ephemeral world


smiling back <2019.5.7>


あめんぼや水面渡るに蹴りひとつ


a water strider


taking a kick and crossing


a basin <2019.5.8>


松落葉風の行く方指して果つ


the fallen leaves of pines


show the direction of the wind,


and are finished. <2019.5.9>


レース越し世界は嘘を忘れけり


through lace curtains


the world forgets


the lies <2019.5.11>


白靴の紐の切れたる海へ投ぐ


the lace has snapped


I throw my white shoes


into the sea <2019.5.11>


袖捲る木陰のベンチ風薫る


roll up my sleeves


on a bench under a tree


the wind announces summer <2019.5.14>


鳥巣立つ拡げし翼次々と


birds leave the nest


unfolding wings—


one after another <2019.5.14>


風青し野は一面の海となり


the wind paints


an open field over


with green. <2019.5.15>


川せみの御座と見へたり捨小舟


芥川龍之介


an abandoned boat—


I've just seen it as the throne of 


a kingfisher


Ryunosuke Akutagawa (1892-1927) <2019.5.16>


山門を五月の風と出にけり


May wind


leaves


a temple gate <2019.5.17>


薫風や君が残香消して去る


a summer breeze


removes your sillage


and leaves <2019.5.19>


小満や緑湛へる朝の森 <2019.5.21>


小満や青み始めし風の色 <2019.5.22>


期限切れ豆腐もおはす冷蔵庫 <2019.5.22>


帰宅してまづは金魚の機嫌取り


after returning home


humor my goldfish


for a start <2019.5.22>


暗闇に鉄路照らして夏の月


summer moon


illuminates a railway


in the dark <2019.5.23>


空見上ぐ遊糸と見えて我が心


looking up the sky


gossamer is floating


my mind itself <2019.5.23>


曇りなく高貴な目許メダカかな


killifish—


the eyes


clear and high <2019.5.23>


指先の天道虫や息を呑む


a ladybird beetle


on the tip of a finger—


hold my breath <2019.5.24>


唐松の青きを背に涼気かな


coming to feel cool behind


my back in the verdant woods of


Japanese larch <2019.5.25>


虹立ちぬ息を切らして丘の上


a rainbow arises


running out of breath—


here's the top of a hill <2019.5.26>


草原や朝摘みパセリ芳しく


parsley picked in morning


the scent of a grassy plain


drifting in my kitchen <2019.5.27>


草刈って吾も草の身と気づきけり


mowing grass


I realize


that's myself <2019.5.27>


レモン水心残りの沈みけり


in a cup of lemonade


leaving last regrets at


the bottom <2019.5.28>


はんざきを宿して森に命かな


salamanders—


forest houses them


and give life <2019.5.29>


万緑や憂ひを見せぬ僧若し


a myriad of green leaves—


a young monk shows his face


without a care <2019.5.29>


驟雨去り地上に空のまだらかな


a shower is over


and leaves the patches of


blue sky on earth <2019.5.30>


薔薇の花数ふるごとに耽りゆく


each time I count


roses in my garden


sinking in reverie <2019.5.31>


蜜豆や別れ話は切り出せず <2019.6.1>


麦の波石碑に寄せて古戦場


the waves of wheat fields


approaching the stone monument of


an ancient battlefield <2019.6.1>


赤熱の坩堝を空に夏日暮


a red-hot crucible


above the horizon


at summer sunset <2019.6.2>


夏柳葉擦れに聴きし風の歌


a summer willow—


listening to the song of the wind


in the rustle of the leaves <2019.6.3>


椰子の木や絵葉書告ぐる梅雨の入り


palm trees—


a picture postcard tells the beginning of 


the rainy season <2019.6.7>


巻き上ぐる滝のしぶきに光満つ


the smoke of


a waterfall rolling up


light diffusion <2019.6.8>


風鈴に楽想授くサティかな


Satie


imparts a motif to


my wind-bell <2019.6.10>


かはほりや防空壕に司令室 <2019.6.10>


翅展げ墨絵と見えし黒揚羽


spreading the wings


like sumi paintings


black swallowtails fly <2019.6.10>


夕涼に足取り軽く家路かな


in the cool of the evening


returning home


on wings <2019.6.10>


鹿子の眼の哀しき空に情移る


the sky reflected in


the pathetic eyes of a fawn


feeling empathy <2019.6.11>


羅に甘き計略紅は濃く


a sweet ruse—


wearing a thin silk dress


lips painted cherry red <2019.6.12>


天使魚午前零時の澄まし顔


angelfish


keeping straight faces


at midnight <2019.6.12>


極上のワインに溶けて君が夢


melting myself


in a vintage wine


I dream you <2019.6.16>


登山帽団扇代りの小休止


my alpine hat


instead of a fan


a short rest <2019.6.16>


仏前に愛用の辞書父の日や


Father's Day—


placing his long-used dictionary on


our Buddhist altar <2019.6.16>


高原へ鉄路の先に夏の霧


going to highlands


beyond a railway


a summer fog waiting <2019.6.17>


分け入れば滴り近し伊豆の径 <2019.6.19>


ビストロのマスター語るパリの夏


the master of a vistro


telling me about


the summer of Paris <2019.6.19>


抱擁や踏まれて忍ぶ雪の下


a close embrace—


stepping on strawberry saxifrages


and forgiven by them <2019.6.20>


アイロンや袖口通ふ夏の風


after running an iron


through the edges of my sleeves


summer breeze passing <2019.6.20>


戯れに君の名描きて夏の浜


in a playful mood


trace out your name on


a summer beach <2019.6.23>


トンネルを越えて夏山近づきぬ


going through a tunnel


the summer mountains


come closer <2019.7.13>


郭公の声に目覚めし諏訪郡 <2019.7.13>


少年や無邪気に振るふ捕虫網


a boy


waving his butterfly net


innocently <2019.7.14>


スコールを軒端に避けて知らぬ仲


a squall falls in torrents,


being under the eaves


with a stranger. <2019.7.15>


傘閉ぢて緑の小道風覚ゆ


folding my umbrella


on a verdant walkway


I feel a breeze <2019.7.20> (写真俳句 / Photohaiku)


殴り書く返信に添へ安メロン


dash off an answer


and send it to a chap


adding cheap melons <2019.7.25>


Listen to the birds sing!


All the little birds


Will die!


鳥の囀りを聴け!


小鳥たちはみんな


死ぬのだ!


Jack Kerouac (1922-1969)


立枯れて誰の贄なるや日輪草


sunflowers—


blighted while still standing


whose sacrifice are you? <2019.8.4>


旅客機の機影を追ひて広島忌 <2019.8.6>


follow the sight of


a passenger airplane in the sky


it's the day of Hiroshima mourning. <2019.8.6>


家出して馬券を買ひし夏の果


ran away from home


and bought betting tickets


it was summer end <2019.8.7>


夕闇や律の調べわを雨に聴く <2019.8.19>


抜けし空日溜りごとの残暑かな


sunlight passes clouds


the lingering summer heat


in the every warm <2019.8.19> <2019.8.19> (写真俳句 / Photohaiku)


Bee, why are you


      staring at me?


I'm not a flower!


蜂よ、何で俺を


  見つめるんだ?


俺は花とは違うぞ!


Jack Kerouac (1922-1969) <2019.8.20>


And the quiet cat


      sitting by the post


Perceives the moon


すると鳴かぬ猫が


   ポストの脇に座りつつ


月に気づく


Jack Kerouac (1922-1969) <2019.9.2>


宿酔に秋の水酌む夜明けかな


for a hangover


drinking crystal water


at daybreak <2019.9.6> (写真俳句 / Photohaiku)


水割の琥珀透かして秋の月


an autumn moon


can be seen through amber of


a whisky-and-water <2019.9.15>  (写真俳句 / Photohaiku)


秋燈や佳境を超えて栞挿す


under an autumn lightー


pass the delightful part of a story, and


slip a bookmark between the pages. <2019.9.16> (写真俳句 / Photohaiku)


飛石を漫ろ歩きの漂鳥や


a wandering birdー


walking along stepping stones


in a garden <2019.9.22>  (写真俳句 / Photohaiku)


秋分や稜線清か八ヶ岳


the autumn equinoxー


look up clear ridgelines of


the Yatsugatake mountains <2019.9.23>  (写真俳句 / Photohaiku)


Dawnーthe writer who


  hasn't shaved,


Poring over notebooks

明け方、作家が


  髭も剃らないまま


手帳類を読み込んでいる。


Jack Kerouac (1922-1969)


七竈小さきハート拾ひけり 


rowanberriesー


I pick up my


little  fire <2010.9.29> (写真俳句 / Photohaiku)


竜胆や標なき世に空を指す 


no guide in our lifeー


gentian flowers


pointing at the sky <2019.9.29> (写真俳句 / Photohaiku)


Buddhas in moonlight 


     ーMosquito bige


Thru hole in my shirt


月夜の仏陀ー


  蚊が喰う


俺のシャツを貫いて


Jack Kerouac (1922-1969)


乾杯の音頭遠かり濁り酒


cloudy sakeー


proposing a toast to somebody


sounds from far away <2019.9.30>


秋の虹諦めきれぬ君が裾


an autumn rainbowー


can't accept the inevitable of


passing your train <2019.9.30>


手に小鳥熱き血潮と触れて知る


a little bird on my handsー


the touch lets me know


the hot blood <2019.10.3>


オルガンや割れし窓越す秋の風


the organー


through a broken window


an autumn wind blows <2019.10.5>


Perfect circle round


      the moon


In the center of the sky


あくまで丸い円


 月


空の真ん中に


Jack Kerouac (1922-1969)


雨季来たりなむ斧一振りの再会


加藤郁乎


the rainy season just comesー


a reunion with you


as a blow of an axe 


Ikuya Kato (1929-2012) <2019.10.26>


胡桃割る古書店街の喫茶室 <2019.10.30>


胡桃割る一夜の夢と笑ふ君 <2019.10.30>


古手紙捨つるすべなし胡桃割る


old letters from friends


how can I throw them away?


only crack a walnut <2019.10.30>


鱈場蟹切つた張つたの衆若し <2020.10.31>


初猟や火薬の臭ひ犬早る <2019.11.2>


月の出や昼夜溶けし五時の鐘


rising of the moonー


fuses day with night


it has just struck five <2019.11.2> (写真俳句 / Photohaiku)


雲間より古書干す陽射し文化の日 <2019.11.3>


老ゆるほど風の境涯雪迎へ <2019.11.5>


前髪を揃へし少女残る秋 <2019.11.6>


the forelock of a girl


trimmed to an even length


wish my autumn still stays here <2019.11.6>


蜻蛉が淋しい机にとまりに来てくれた <2019.11.9>


尾崎放哉


a dragonfly comes closer for


landing on my desolate deskー


glad happening for me


Hosai Ozaki (1885-1926) <2019.11.9>


「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日


俵万智


on july sixth


"I feel good in this seasoning."


as you said so,


we created soon


the salad anniversary.


Machi Tawara (1962- )


冬隣まだ土色の大地踏む


winter's comingー


tread the ground of


an earthlike colour as yet <20190.11.7>


小春日に不思議の国の兎かな


in a sunny winter day


the rabbit wearing a waist-coat turns up


It's Wonderland?


風渡る諏訪湖は広し小春の日 <2019.11.9>


鯛焼きや二つに割けば湯気ひとつ (2019.11.9)


こそこその話がやがて高くなりピストル鳴りて人生終る


石川啄木


even talking in a whisper rises after a while


the shot of a pistol sounds, and


life is over


Takuboku Ishikawa (1886-1912)


駆け来てはまた何処へやら木の葉かな


the leaves at my feetー


run up to me, and


going somewhere <2019.11.10> (写真俳句 / Photohaiku)


雑炊や戦時語りし祖母遺影 <2019.11.11>


木菟の吠ゆる度ごと鎮まりぬ


every time


a horned owl howls,


deeper hush falls <2019.11.12>


空風を跨いで歩幅広がりぬ


striding over


the dry windsー


got long steps <2019.11.13>


冬浅し紅茶にミルク一雫


winter beginsー


put a drop of milk


in a cup of tea <2019.11.13>


風舐めて風の味して雪女 <2019.11.14>


縄跳びや背伸びをしては躓けり


jumping ropeー


extend themselves to the limit,


and stumble on trifles <2019.11.14>


コート脱ぎ身軽となりし山気吸ふ


taking off my  coatー


I feel light, and inhale


mountain air in long drafts <2019.11.17>


柳葉魚焼く大西洋の潮を吹く <2019.11.17>


死場所も空を選ぶや鷹飄々


in the high sky


a hawk flies nonchalantly,


preferring death as is <2019.11.18>


頰の泥白く乾きし泥鰌掘る <2019.11.19>


泥鰌掘る行き着く先を風に問ふ <2019.11.19>


京みやげ栞を挿して寝酒かな


a souvenir of my trip to Kyotoー


slip the bookmark, and have a drink


before retiring for the night <2019.11.20>


寒暁やバーテンの弾くセレナーデ 


cold dawnー


a bartender playing his serenade


it touches you <2019.11.20>


初冬や後姿に影淡し


early winterー


from behind, your light figure


goes along


幾度でも波頭を砕く冬の巌


refrain of


breaking waveー


winter rock <2019.11.21>


Arms folded


     to the moon,


Among the cows


組んだ腕


  月に対す


牛に囲まれて


Jack Kerouac (1922-1969) <2019.11.21>


オリオン座荒れたる海の迎へけり


Orion


greeted with


the raving sea <2019.11.23>


むら時雨山から小僧ないて来ぬ


小林一茶


a shower in early winter—


here comes a young monk crying


from a mountain


Issa Kobayashi (1763-1827) <2020.11.25>


機織りのカタンカタンに夜は冴ゆ


every clatter of


weaving on a loom,


night  turns clearer <2020.11.26>


Last night it rained.


Now, in the desolate dawn,


Crying of blue jays.


Amy Lowell (1874-1928)


ゆふべは雨


今しがた、寂とした曙に


アオカケスの鳴声


エイミー・ローウェル <2019.11.26>


百合鴎捨て子の手には白き羽


hooded gulls


the feather in the hands of


an abandoned child <2019.11.28>


口を吐く寝言に覚めし日向ぼこ


bask in the sun


sleep talkings


awake myself <2019.12.2>


校庭に砂粒蒐む水晶の光を選りて投げし未来へ


in a schoolyard


collected the sands of


#crystal, and


preferred brighter ones.


into the time to come, I threw all. <2019.12.2>


巻揚ぐる風の姿や落葉掃く


sweeping—


swirls up dead leaves


the figure of wind, I see <2019.12.5>


耳袋ビロード越しの声優し


earmuffs


the voice through the velvet


hears gently <2019.12.8>


足許に冬の海凪ぐ小径行く


at my feet, the winter sea 


grows calm as #velvet


I proceed along a path <2019.12.8>


風に揺れ風に散る身に木の葉かな


the leaves in the wind


swaying, and will be scattered


just ourself <2019.12.9>


Rainy night


     the top leaves wave


In the gray sky


雨の夜


 天辺の葉が波打つ


冥濛とした空で


Jack Kerouac (1922-1969) <2019.12.10>


cedar cones


tumble in a mountain stream


letters from home


Gerald Robert Vizenor (1934- )



ヒマラヤスギの毬花たち


山の小川に転び入る


里からの手紙です。


ジェラルド・ロバート・ヴィゼナー (1934- ) <2019.12.18>


雀卓に酒の染みあり氷柱伸ぶ


a strain of sake


on our mah-jongg table


I see icicles getting longer <2019.12.22>


手袋や外す刹那の潔し


at that very moment


taking off your gloves


with good grace <2019.12.25>


帰り来ぬ時に堪へけり大晦日


New Year's Eve


endure the time passed,


never comes again. <2019.12.31>


古池や蛙飛びこむ水の音


松尾芭蕉


into a rotten pond


a frog plunging


sounds the splash


Basho Matsuo (1644-1694) <2020.1.2>


仁和寺や淑気に覚めし朝景色 <2020.1.3> (写真俳句 / Photohaiku)


the morning scenery of 


Ninna-ji Temple, the quiet and happy air 


wakes me up. <2020.1.4>


物思ひ彼方へ消えし雪景色


a snow scene—


my feeling of languor


goes away <2020.1.12>


往時にはボタ山ありし街みぞる


in flourishing days


a huge heap of coal waste was,


Sleet falls in the street. <2020.1.15>


水仙花川縁の径繋ぎけり


a succession of narcissuses


makes a riparian path


straight <2020.1.20>


わが胸を夏蝶ひとつ抜けゆくは言葉のごとし失いし日の


 寺山修司


in summer 


a butterfly goes through 


my chest 


as the phrase of 


a lost day


Shuji Terayama (1935-1983) <2020.1.19>


胸に聞く君が戯言冬木揺る


in my arms


listening to your rigmarole


winter trees swaying <2020.1.22>


探梅行香りの先の邂逅や


while following up the scent,


look for plum blossoms between hills.


happen to meet you. <2020.1.25>


原子童話


戦闘開始


二つの国から飛び立った飛行機は

同時刻に敵国上へ原子爆弾を落しました


二つの国は壊滅しました


生き残った者は世界中に

二機の乗組員だけになりました


彼らがどんなにかなしく

またむつまじく暮らしたか


それは、ひょっとすると

新しい神話になるかも知れません。


石垣りん


—A Fairy Tale of Nuclear—


A war broke out.


A plane took off from each another country, and

dropped the atomic bomb to the enemy at the same time.


The two countries were totally destroyed.


There were no survivors in the world

except for the crew of the two planes.


How sad they were, and how harmonious life they had?


That might just possibly become a new myth.


Rin Ishigaki (1920-2004) <2020.1.26>


日脚伸ぶ定まらぬ世に驚けり


the days grow longer—


the uncertain world


to be amazed <2020.1.26>


叫べども遠くにありし寒昴


I wish


the Pleiades could be


within earshot <2020.1.28> (写真俳句 / Photohaiku)


銃声や冬眠の山開かれり


a shot rings out—


the mountains in hibernation


open up the folds <2020.1.30>


薔薇色の嘘を一匙氷湖かな


in iced lake


put a spoonful of


rosy lie <2020.2.1>


悴みし筆に見えたる北の路


the script looks to be 


written with numb hands—


the letter from the way to the north <2020.2.1>


春を待つ鯉にパン屑廃れ寺 <2020.2.2>


束の間の夢の戸口や冬終る


winter ends—


the opening of a brief fantasy


isn't it? <2020.2.3>


地図帳や初音を聴きし谷は西


in my atlas, the valley I listened to


the first song of a bush warbler is


to the west from here <2020.2.5>


春浅し作り笑顔の鏡かな <2020.2.7>


とりどりのルージュの魅惑化粧箱春の夢さへ永くとゞめん


enchanted with


various colours of lipsticks


in a vanity case


even a spring dream


we're trying to keep long <2020.2.7>


レモン厚切り春の休日優雅にす


鈴木真砂女


thickly sliced lemon—


makes my spring holiday


graceful


Masajo Suzuki (1906-2003) <2020.2.8>


修験道蕊日を仰ぐ春初め


the beginning of spring—


around the path of mountain asceticism,


stamens looking up at the sun <2020.2.9> (写真俳句 / Photohaiku)


あをあをと空を残して蝶別れ


大野林火


leaving a stretch of


the blue sky—


butterflies break up


Rinka Ohno (1904-1982) <2020.2.10>


死を宿し病むとも若さ大雪の朝の光を友は告げくる


春日井建


he houses his own death

 

and is in sickness.


still, he's young.


a heavy snowfall morning—


the friend comes to tell the light.


Ken Kasugai (1938-2004) <2020.2.11>


君憎し素知らぬ顔の寒椿 <2020.2.13>


手提げには鶯餅の家路急く <2020.2.14>


風は知る君までの距離春の鹿 <2020.2.14>


宛も無く届く手紙や藪椿


a letter delivered—


without my address,


a wild camellia <2020.2.18>


春の空自由の国はそこにだけ


spring sky—


the country of freedom


only there <2020.2.24>


春の土ゴビの砂塵を語る人


spring soil—


you telling me about


the sandstorm of the Gobi <2020.2.26>


鳩歩むほどに笑窪や春の土


dimples—


every step of a pigeon


on spring earth <2020.2.26>


窓外の白波誘ふ春の海


from outside a window


whitecaps invite me to 


the spring sea <2020.3.3>


春風に数ふるほどの波頭かな


under the spring wind


a few whitecaps


can be seen <2020.3.3>


遠吠えもやゝ頼りなし春の月 <2020.3.10>


一歩づつ近づくが如春の月


at each step


a spring moon


appears closer <2020.3.10>


竜天に昇る山門開かれり


—2018.3.22—


rising dragon


up into heaven,


temple gate opened.


—2018.9.8—


升天的龙—


寺院的大门


被打开了 <2020.3.14>


蒸鰈連絡船の離岸せり


a steamed flatfish—


a railway ferry


left shore <2020.3.26>


いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。


Wondering whose reign it was. Among the high or the next ladies in the Imperial Court, a lady who was not belonged in so high rank but loved by emperor was living in there. 

<2020.3.30>


限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり


桐壺


even if I know life is finite


the road where branches off 


makes me sad


wishing to be given 


our time a little longer


—Kiritsubo—


I leave you, to go the road we all must go.


The road I would choose, if only I could, is the other.


—Edward G. Seidensticker—

<2020.3.30>


弔電に春の一字を含めけり


telegraphed my condolence—


including one word


"spring" <2020.4.9>


春の虹山と降り来て風と去る


                           —2018.4.7—


a spring rainbow—


come down like a hill, and


blown away <2020.4.12>


月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老をむかふるものは、日々旅にして旅を栖とす。


Days and months are the passengers for a hundred generations, and the years coming and going are also travelers. The man who floats his life on a boat and grows old holding horses lives in journeys from day to day, and makes them his home. 


The months and days are the travellers of eternity. The years that come and go are also voyagers. Those who float away their lives on ships or who grow old leading horses are forever journeying, and their homes are wherever their travels take them.


— Donald Keene —

<2020.4.12>


残雪や一本道の遥か先


remaining snow—


far beyond 


a straight road <2020.4.13>


ボートレース川面に道を残しけり


a regatta—


left the roads on


a river <2020.4.13>


てのひらに落花とまらぬ月夜かな


渡辺水巴


in my palm


petals keep falling—


it's a moonlit night


Suiha Watanabe (1882-1946) <2020.4.14>


春雨を凌ぐ大樹の葉擦れかな


under a big tree


take shelter from the spring rain 


whispering leaves overhead <2020.4.14>


荒地超ゆ靴を払へば春の土


crossed desolation


and beat my shoes,


spring dirt swirled up. <2020.4.16>


白鳥はかなしからずや空の⾭海のあをにも染まずただよふ


若山牧水


wondering if


the white bird feels sad,


floating without dyeing in


the sky blue or 


the marine blue. 


Bokusui Wakayama (1885-1928) <2020.4.18>


つばくらめ雲間の青を見定めり


swallows


caught sight of the blue


through the clouds <2020.4.18>


街角のたばこ屋跡の薊かな


thistles blooming—


at the street corner where


a tobacconist's once stood <2020.4.19>


風船の風に突かれて旅の空


the wind dabs at


a balloon—


away from home <2020.4.20>


A spring mosquito


      dont even know


How to bite!


Jack Kerouac (1922-1969)


春の蚊のいかに刺すさへ知らぬ身や


ジャック・ケルアック <2020.4.21>


ラジオ消す春の雨音歌と聴く


turn off the radio


the sound of spring rain


listen as a song <2020.4.22>


"時代は要求した"


時代は俺たちに歌えと要求しては、


人の舌を切り捨てた。


時代は俺たちに優雅に生きろと要求しては、


樽の注ぎ口を叩き壊した。


時代は俺たちに踊ることを要求しては、


人を鉄のズボンに押し込んだ。


それで時代は、要求した幾分かのクソを手にして終えた。


"The Age Demanded"


The age demanded that we sing


and cut away our tongue.


The age demanded that we flow


and hammered in the bung.


The age demanded that we dance


and jammed us into iron pants.


And in the end the age was handed


the sort of shit that it demanded.


Hemingway

<2020.4.23>


散る花の風なき胸に積もりけり


falling petals 


stay in your 


calm heart <2020.4.25>


行春の日曜午後や爪を切る


the departing spring—


it's Sunday afternoon


I cut my nails <2020.4.26>


花時を過ぎて再び此岸かな


the time of cherry blossoms


has passed,


life resumes. <2020.5.1>


雨水の火照りを冷ます夏近し


I've realized


rainwater cooles my glow.


summer comes closer. <2020.5.2>


提灯の揺るゝに添ひて朧影


goes along with


a swinging paper lantern—


somebody's faint figure <2020.3.3>


マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや


寺山修司


At the moment of


striking a match, the sea is 


blanketed in a dense fog—


Is there the Fatherland


to give my life for?


Shuji Terayama (1935-1983) <2020.5.6>


修司忌に三日遅れの墓前かな <2020.5.7>


溶鉱炉遠き昭和や修司の忌 <2020.5.7>


magnolia petals


fluttering down


the sun


sinking


keep my memory <2020.5.9>


物憂さは五月の風の湿りかな


my own ennui—


like the damp of 


May wind <2020.5.16>


the narcissus opens:


nothing to believe,


   nothing to doubt


—James Luguri—


一輪の水仙が咲く


何も信ぜず、


 疑いもせず


—James Luguri— <2020.5.21>


庭先に寄道誘ふクレマチス


in the front part of a garden


clematis flowers 


invite my detour <2020.5.24>


青蛙雨粒追ひし満池に輪


following drops of rain


a green frog jump into a pond.


ripples across the surface <2020.5.26>


山裾の木道軋む梅雨じめり


a submontane boardwalk squeaks


walking in the rainy season


feel the damp air <2020.6.22>


星涼し鳥声のやゝ近づきぬ


under cool stars


bird calls come closer


a little bit <2020.6.27> (写真俳句 / Photohaiku)


永遠の逢瀬の項や紙魚走る <2020.7.17>


紙魚走る書庫に沈めり乾湿計 <2020.7.17>


ででむしや見えぬ荷を牽く身の哀れ


have pity on


snails pulling 


their invisible loads <2020.7.17>


岩間より滴り落ちて四分音符


a drop falling from rocks—


a quarter note on a score


comes into existence <2020.7.19>


夏蝶や蜜に倦み果つ空低し


summer butterflies


getting weary of nectar


the sky is low <2020.7.24>


古寺の僧雨漏り直す梅雨の晴


the priest of an old temple


in a sunny spell during the rainy season

 

repairing the leaking roof <2020.7.25>


ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく


石川啄木


a home accent


makes me nostalgic 


I often go to 


a crowded station 


to hear that


—Takuboku Ishikawa (1886-1912) <2020.7.27>


夏雲や紙飛行機の超えて消ゆ


a paper plane 


getting over summer clouds


and lost to view <2020.7.30>


一歩出てわが影を得し秋日和


日野草城


took a step, and


got my shadow


on a bright autumn day


— Sojo Hino (1901-1956)  <2020.8.8>


濠埋めて果托俯く敗れ荷


over a moat 


withered lotus leaves


the tori looking down <2020.8.10>


鬼灯や水を湛へる星の数 <2020.8.10>


ground cherries—


count the number of stars


filled with water <2020.8.10>


酸浆—


我数


充满水的星 <2020.8.24>


alquequenjes—


cuento unas estrellas 


que rebosante de agua <2020.9.1>


꽈리—


나는 물로 가득 채우는 


별을 세다 <2020.9.5>


Blasenkirscher—


ich zähle die Sterne


dem ein Wasser fülle <2020.9.6>


草揺るゝ雲は靡けり風の色


grass swaying


clouds streaming in the current


—the colour of wind <2020.8.15>


藪枯らし往事渺茫苦き酒 <2020.8.22>


a rose buried deep


in an execution site


butterflies waiting


薔薇埋めし刑場跡に蝶が待つ <2020.8.30>


南洋の湿りの籠る白露かな <2020.9.7>


風音の耳に残りし野分過ぐ


a typhoon has passed


the sound of the wind


still staying with me <2020.9.8>


唐黍や母は違へず塩加減 <2020.9.8>


饂飩屋に薬味の缺けし秋簾 <2020.9.12>


ピーマン切って中を明るくしてあげた


池田澄子


cutting 


a green pepper—


lightened  the inside


—Sumiko Ikeda (1936- ) <2020.9.13>


拾ひ見し林檎に頰の傷を知る


picked up an apple, and


noticed a bruise 


on its cheek <2020.9.15>


箸置きて鮭ひと切れに波の音


lay my chopsticks down


a sliced salmon on a plate—


the sound of the waves be heard <2020.9.16>


海ばかり見てゐる君に秋の風


all you do is 


look at the sea—


autumn winds blowing <2020.9.16>


星明りひときは大き山の影


under starlight


the silhouette of a mountain


looks particularly big <2020.9.17>


"Suicide's Note"


The calm,


Cool face of the river


Asked me for a kiss


—Langston Hughes (1902-1967)


"遺書"


穏やかで、


冷めた川面が、


キスを求めてきた。


—ラングストン・ヒューズ (1902-1967 ) <2020.9.17>


ふるさとや秋思のわれに波崩れ


鈴木真砂女


in my hometown


a melancholy mood arose


—a wave collapsed before me


Masajo Suzuki (1906-2003) <2020.9.19>


束の間の晴間の青き子規忌かな


a break in the rain—


looking up a blue sky


on the anniversary of Shiki's death <2020.9.19>


旋風空き缶転がる月夜かな


whirlwinds—


an empty can goes rolling


it's a moonlit night  <2020.9.21>


秋分に茶渋落とした湯呑かな <2020.9.22>


秋桜風に任せし道すがら


cosmoses—


leave myself to the wind


while walking <2020.9.22>


秋興やレコード針を新調す <2020.9.23>


道すがら風に吹かれて秋桜


on a way


blown by the wind—


cosmoses <2020.9.24>


紫苑咲く別れ話を切り出せり


asters have bloomed—


broach the subject of


separation <2020.9.24>


頬伝ふ涙と見えて秋の雨


mistake autumn rain for


teardrops running down 


your cheeks <2020.9.24>


函館の朝の喧騒イクラ丼 <2020.9.26>


かりそめの出会いとなりし秋の虹


it was


a fleeting encounter—


autumn rainbow <2020.9.26>


you still wearing


a pendant of malachite—


let down its hair <2020.9.26>


別れ際続きますねと秋の雨


on parting


"it would continue to rain"


one autumn day <2020.9.27>


海猫帰る携帯の声遠のけり


black-tailed gulls gone—


your voice on my cellphone


fades away <2020.9.29>


菊花の契り」(冒頭) 上田秋成


青々たる春の柳、家園に種ることなかれ。交りは軽薄の人と結ぶことなかれ。楊柳茂りやすくとも、秋の初風の吹くに耐へめや。軽薄の人は交りやすくして亦速なり。楊柳いくたび春に染れども、軽薄の人は絶えて訪ふ日なし。


"The pledge of chrysanthemums" (the opening) by Akinari Ueda


 Fresh and green willows in spring should not be planted in your garden. Relationships should not be formed with insincere people. Though willows grow lush fast, they can't stand up to the first wind of autumn.

 Relations with insincere people are formed easily, but end soon.  Willows will be dyed in spring colour every year, but insincere people will never revisit you.

<2020.9.29>


水澄めり東京すでに遠ければ


water is limpid—


as I've already come


far from Tokyo <2020.10.2>


雲間より月現れて歩の緩む


from behind clouds


the moon appears—


relax my pace <2020.10.3>


毬栗の落ちて転がり無頼かな <2013.10.28>


chestnuts in burs


falling and rolling out of a tree—


nothing to rely <2020.10.3>


一口の水を含めし朝の冷え


in the morning


taking a mouthful water—


chilly autumn <2020.10.4>


去ぬ燕悟りの時を待たずして


swallows leave


before the time of 


their satori <2020.10.4>


草紅葉昨日拾つた赤い靴 <2020.10.12>


北斗ありし空や朝顔水色に

渡辺水巴


the sky where


the Plough before—

morning glories bloom light blue


—Suiha Watanabe (1882-1946) <2020.10.12>


寝転べば野の花空へ伸ぶと知る


lying on grass—


realize field flowers grow 


toward the sky <2020.10.6>


老いたしや書物の涯に船沈む


寺山修司


I long to grow old—


as a ship sinking to 


the depth of books


—Shuji Terayama (1935-1983) <2020.10.7>


襟元のうそ寒ければ身の屈む


feeling a bit cold 


round the neck—


people stoop in walking <2020.10.10>



渡辺水巴


the sky where


the Plough before—


morning glories bloom light blue


—Suiha Watanabe (1882-1946) <2020.10.12>


朝寒を過ぎて隣に寝息かな


a chilly morning 


has passed. I hear next to me


breathing in your sleep. <2020.10.15>


喧嘩して負けてひと蹴り相撲草 <2020.10.17>


草枕行李に収むきりたんぽ <2020.10.18>


朝珈琲一口ごとの秋気かな


morning coffee


every sip—


autumnal air <2020.10.22>


霜降や雨は上がると風の告ぐ <2020.10.23>


無人駅遠く潮騒火の恋し


an unmanned station—


it sounds the sea from afar


longing for a fire <2020.10.24>


金柑や小天体を手渡さる


a kumquat—


little heavenly body is


handed <2020.10.27>


爽籟や砂漠を吹きし風であり <2020.10.28>


月光や君さへ知らぬ人と見ゆ


in the moonlight


even your face


looks stranger <2020.10.28>


天界に柿を残して日の暮れり


in the skies


leaving persimmons


the sun set <2020.10.29>


絵葉書の海辺の町に星流る


the seaside drawn


on a picture postcard—


a shooting star glides <2020.10.30>


夢の地に届かざる間に秋の蝶


before arriving 


at oneiric land—


autumn butterfly <2020.11.1>


傍観を良心として生きし日々青春と呼ぶときもなかりき


近藤芳美 (1913-2006)


in those days


listening to my conscience


I lived as a bystander


any moments of youth


I didn't have


—Yoshimi Kondo (1913-2006) <2020.10.9>


風を追ひ帰り花まで百メートル


on the track of wind


as far as second blooms


hundred meters <2020.11.12>


夜話や拳固で握るコップ酒 <2020.11.21>


手袋や柔らかき風掴みけり<2020.12.3>


寒林や連絡船の見え隠れ <2020.12.4>


枯茨ひと呼吸して跨ぎ越す


a dead thorny shrub—


with a intake of breath


I step over <2020.12.13>


冬服に着替えて歩幅縮みけり


changing into 


winter clothes—


my steps become short <2020.12.20>


野に生ふる草にも物を云はせばや涙もあらん歌もあるらん


与謝野鉄幹


grass 


growing in the field—


if I made them talk something


tears would appear


songs would be listened


—Tekkan Yosano (1873-1935) <2020.12.20>


古書閉じぬ塵舞ひ光る冬至かな


the winter solstice—


when I've closed an old book


the dust swirls up in light <2020.12.21>


別れの瞳海より青し疑わず


寺山修司


your parting eyes


dyed blue, deeper than the sea


—no doubt for me


—Shuji Terayama (1935-1983) <2020.12.22>


冬夕焼け朱色に染まる貸ボート


winter sunset glow


lacquers rental boats


in vermilion <2020.12.23>


街の灯の星へと通ずクリスマス


Christmas—


streetlights leading 


to stars <2020.12.24>


髪飾り外して解きぬ冬の川


taking off a hair ornament


she unfastens her tresses


a winter river appears <2020.12.25>


雪は降る喧騒の街鎮もらる


snowing 


calms our streets where 


overflowed with noise <2020.12.26>


歳晩や風の行方人知らず


the year-end—


where the wind has gone


nobody knows <2020.12.28>


金屏風地上の華の形見かな


a gilt folding screen


left as a memento of


earthly splendours <2020.12.28>


遠い木が見えてくる夕十二月


能村登四郎


evening in December


when far trees begin 


to be seen


—Toshiro Nomura (1911-2001) <2020.12.28>


冬凪や秒針停止ダリの刻 <2016.1.22>


a winter calm—


a second hand has stopped


the time of Dalí starts <2020.12.29>

 


年迎へ温泉街に髭剃りぬ


greeting the New Year—


got shaved


in a hot springs town <2021.1.1>


今一度顔洗ひけり去年今年


the new year 


has come—


wash my face anew <2021.1.1>


初風や参詣客のやゝ痛し


New Year's wind—


visitors to a shrine


a little verklempt <2021.1.1>


手袋や柔らかき風掴みけり


putting on my gloves—


the touch of wind changes 


to be tender <2021.1.1>


一抹の吹雪を胸に知らぬ街 (2018.1.12)


living in a stranger town


with the shadow of 


a snowstorm <2021.1.1>


初凧や糸巻き追ひて児の駆ける (2018.1.13)


kite-flying


on the New Year's Day—


children running after their reel <2021.1.1>


日記始欠落の無き今日ひと日


writing my first diary of the year


on one day today


no missing past <2021.1.2>


風待ちの帆船のまゝに三が日


a sailboat


still waiting for the wind


—the first three days <2021.1.3>


夜明け前来光までの淑気かな


just before daybreak


until the sun rises


full of the blessed air <2021.1.3>


罰であり祝福であり雪の降る


bitter reckonings and


blessing letters as well


snowflakes falling <2021.1.3>


オリオン座村に一つの望遠鏡 (2018.1.9)


Orion—

a telescope

in our village           (2018.9.16) 【写真俳句】


年立てり浅き眠りに星明かし


a new year arisen—


passing nights with light sleep


stars brightening <2021.1.3>


バーゲンに破魔矢覗かす手提げかな <2021.1.4>


狼に噛まれし痕と笑ふ祖父


"a scar from a wolf bite!"


grandfather shows me


his back with a  laugh <2021.1.4>


風忘る檻の禿鷲羽重し


lost the feel of wind


the weight of wings remains


—a caged vulture <2021.1.4>


また一日氷湖近づく日を数ふ


day by day—


approaching a time our lake freezes over


imagine the remaining days <2021.1.4>


小寒や祖父の手紙のさうらふ文 <2021.1.5>


小寒やポケットの内拳二つ


midwinter begins


reaching into my pockets


make two fists <2021.1.5>


【推敲句】静けさや両手に閉づる冬障子


with both hands


closing sliding paper doors


I hear wintry stillness <2021.1.6>


樏や小さき辛抱一歩づつ


snowshoes—


a little perseverance


step by step <2021.1.6>


焚火消ゆ話の種も尽きてをり


leaf burning goes out


conversation pieces


run out as well <2021.1.6>


人日に夢のお告げも忘れけり <2021.1.7>


ペダル踏みマフラーの子は風となり <≈2005>


working a pedal


a child wearing a muffler


becomes the wind <2021.1.7>


月冴えり湖面に白き道渡る


a clear moon—


a white road 


across a lake <2021.1.7>


風音の身に近づきぬ松の明


New Year's week ends


a sound of wind


comes closer <2021.1.8>


古年の石鹸ひとつ終へにけり <2021.1.8>


歯固に隙間の増えし並びかな <2021.1.9>


猿無心客を窺ふ猿舞師


an innocent monkey—


his trainer judging popularity


from audience's faces <2021.1.10>


鋭角の刃物を撒きて冬の海


keen blades


spreaded over 


a winter sea <2021.1.10>


初句会蜜柑煎餅老眼鏡 <2021.1.12>


a knock on the door—


sweet fragrance


tells me your coming <2021.1.12>


雪ひとひら喝采もなく解けゆけり


a snowflake


melts before 


receiving an ovation <2021.1.12>


白鳥来る畳む翼の大いなる


swans land on a lake


folding their large wings


amazing nature <2021.1.13>


かしましき厨の朝や餅の花 <2021.1.14>


一等星氷湖に映る二つ三つ


first-magnitude stars


reflected in an iced lake


—two or three <2021.1.14>


指折りの早足りなくて小正月 <2021.1.15>


雪掻きや雪に投げらる身のひとつ


a snow shoveler


thrown away


by the snow <2021.1.16>


許されて雨は降りけり雪の消ゆ


all is forgiven


it's about to rain


the snow melts <2021.1.16>


寒紅を差して鏡の他人かな


with lips painted brighter red


I see somebody else's reflection


in a mirror <2021.1.16>


慰霊碑の春待ちの顔阪神忌 <2021.1.17>


眉墨を引かれて近き冬の月


penciled eyebrows


getting closer


—wintry moons <2021.1.17>


裏切りの傷より流る冬の水


from the wound 


by a betrayal


winter water oozes <2021.1.18>


陽は射せど影踏む度に霜柱


while the sun is shining


each time I step on a shadow


the hoarfrost crunches <2021.1.18>


silhouettes on window curtains


lovers' pantomime


twinkling stars falling silent too <2021.1.20>


焼き魚残さる骨や寒がはり <2021.1.20>


あの月をとつてくれろと泣子哉


小林一茶


a child says


"bring me that moon!"


between sobs


—Issa Kobayashi (1763-1827) <2021.1.20>


朝支度冬の凪にて始まりぬ


preparations in morning


start from


a winter calm <2021.1.21>


胸に受け死んだ振りする雪礫 <2021.1.22>


享楽の屑に塗れし寒烏


covered with 


epicurean junk


—a winter crow <2021.1.23>


aus der Wunde durch einen Verrat


winterliches Wasser 


sickert <2021.1.23>


der klare Mond—


eine weiße Straße führt 


über den See <2021.1.24>


天狼の咆哮聞ゆ風なき日


hearing the roar of


the Dog Star


—one day free from wind <2021.1.24>


一筋の降りゆく道や氷柱伸ぶ


coming down


a straight path—


an icicle gets longer <2021.1.24>


ゴミ箱を烏の降りてからつ風


crows jump off 


a garbage pail—


a strong dry wind left <2021.1.25>


火に寄せて頰だけ紅し寒泳ぎ


midwinter swimmers


warm themself at the fire


only their cheeks redden <2021.1.25>


罪状はただ聞き流されし寒椿


a winter camellia 


just listening to my accusation 


with indifference <2021.1.26>


モネ画集書棚に返す春近し


to my shelf


I return a book of Monet paintings


—spring coming soon <2021.1.27>


踏む度に楽土の側へ日脚伸ぶ


the days grow longer—


feeling every step on the earth makes 


a paradise closer <2021.1.27>


春を待つ顔とは見えず鏡かな


doesn't look as the face 


waiting for spring yet


—myself in a mirror <2021.1.28>


ノート閉ず昭和の日付冬安居 <2021.1.29>


人知れず大の字となる冬安居 <2021.1.30>


冬蝶や屍羽に包まれり


the carcass 


wrapped in its wings


—a winter butterfly <2021.1.30>


眼帯に死蝶かくして山河越ゆ


寺山修司


hiding a dead butterfly


in the bandage over my eye


I cross mountains and rivers


—Shuji Terayama (1935-1983) <2021.1.30>


snowflakes don't know their kismet


they tell us where heaven is <2021.1.31>


静けさに靴音響く氷り滝


in the still air


my footsteps sound well


—a frozen waterfall 


in der ruhigen Atmosphäre


mein Schritte tönt


—ein vereister Wasserfall <2021.1.31>


野草の名一つ憶えし春を待つ


I memorize 


a name of wildflower


—waiting for spring <2021.2.1>


ストーブに弁当載せて四方話


putting lunch boxes 


on a stove—


pass the time in small talk <2021.2.1>


行く川の流れのまゝに冬の果


leaving up to 


the current in a river


winter passes <2021.2.2>


風の解く髪柔らかし春立ちぬ


the wind loosens your hair


feel it soft in my hand


spring has come <2021.2.3>


listening to foreign language


another personality appears inside


new world rises <2021.2.5>


別れの日間近に見えし春の月


at parting


a spring moon appears


close at hand <2021.2.6>


淡雪の手の平までの命かな


falling light snow


life ends 


in your palms <2021.2.7>


陽に翳す薄氷に見し狭き空


holding thin ice 


up to sunshine


—a small sky through it <2021.2.9>


目を閉じて春の日和と風に知る


even with my eyes closed


the wind tells me that 


it's a lovely spring day <2021.2.13>


残されし余白を想ふ春の空


I think of filling in 


the remaining blank


—a spring sky <2021.2.16>


人知れず白梅咲けり山の寺


ume flowers 


blooming without being seen


in a temple on a hillside <2021.2.20>


長閑さや角を曲がれば天丼屋


a mild spring day—


when I turn the next corner


a tendon shop comes in sight <2021.2.21>


行先も知らぬ始発や雪の果


on the first train


the destination, it doesn't matter


—the last snowing <2021.2.24>


振り返る春の夕焼沖に船


turn my head—


with a spring sunset glow


a ship off the coast <2021.2.25>


二月逝くコップ一杯水を干す


I drink up 


a cup of water—


February passes <2021.2.28>


新しき靴の身軽や春動く


wearing new shoes


step lightly—


spring sways <2021.3.2>


鎌倉の小町通に梅見かな <2021.3.6>


酒旗の顔挨拶抜きの春嵐 <2021.3.14>


書止を忘れし手紙今は春


a letter delivered


no closing remark


—now's spring <2021.3.14>


A falling petal


Strikes one floating on a pond,


And they both sink.


—Richard Wright (1908-1960)


散りゆく花びらが


池に浮くひとひらを突き


もろとも沈む


—リチャード・ライト <2021.3.30>


春服を纏へば風の柔らかし


wearing 


spring clothes


the wind feels soft <2021.3.30>


鐘霞む大路を先へ由比ヶ浜


a temple bell ringing from far away


walking down the main street to


Yuigahama beach <2021.4.2>


来し方は遠望の里桜狩


viewing from distance


the village I came from there


—a sakura hunt <2021.4.4>


あての無き旅の支度や鳥雲に


preparing for 


a journey to nowhere—


a bird goes behind a cloud <2021.4.8>


一幅の絵画となりて花の陰


a scene turning into


a picture scroll—


the shade of flowers <2021.4.10>




— Apr. 11, 2021
























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